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”蛇足”がなければねぇ… ―『シャッター アイランド』―

『シャッター アイランド』 監督 マーティン・スコセッシ

Shutter_Islandチラシ
 スコセッシ監督、ディカプリオ主演のおなじみタッグでのミステリ(サスペンス?)ということで、久しぶりに劇場へ。

 余談だが、ディカプリオは個人的にどうしても”二枚目”俳優と思えない…。確かに美しいブルーアイズが印象的だけれど、永遠の悪ガキ童顔ではないかと…。だから『タイタニック』でのヒーローぶりがどうしてもしっくりこなくて(この作品に恨みはないが)。
 ただし、『ギルバート・グレイプ』での知的障害者アーニー役(主役のデップさまを食っていた!)、そして『太陽と月に背いて』のランボー役(独特のセクシーさに魅了され、しばらくランボーというと彼の姿を思い浮かべたくらい)で、その演技力が気になる俳優。(『ブラッド・ダイヤモンド』のダニー・アーチャーもよかった)
 眉間の縦しわが、気難しさや激しさ、勝気さをうまく見せていて、これから年齢を重ねるごとにますます演技の幅が広がりそうな期待感を持っている。ちょっとJ・ニコルソンに通じるような(あそこまで突き抜けなくていいけど(笑))。完全なる悪役や、狂気の犯罪者などの演技を見てみたい。

 スコセッシ監督は、気に入った俳優とはかなり長いスパンで作品を作る。『タクシー・ドライバー』『N.Y. N.Y.』『レイジング・ブル』『グット・フェローズ』と、デ・二―ロとのコンビ作品が好きだ。

 さて、いまひとりのお気に入りディカプリオとの新作は…?
 (多少ネタばれの要素がありますー)

 精神疾患による犯罪者を隔離収容している孤島「シャッター アイランド」。
ここでひとりの女性患者が失踪する事件が起きる。痕跡なく謎のメッセージを残して消えた彼女の捜索と事件の背景を調べるため、連邦保安官のテディ・ダニエルズが、相棒チャックとともに乗り込むことになる。

 電流の流れる有刺鉄線に囲われ、収容所の持つフェリー以外では島を離れることのできない外界から完全に遮断されたその島は、厳重な管理だけでは説明できない怪しい空気を孕んでいる。
 さっそく主任医師コーリーをはじめ、調査のための事情聴取をするものの、当の収容所は、行方不明の女性患者レイチェル・ソランドを真剣に探す様子もなく、他の職員、患者を含め、みなが何かを隠しているようだ。
 はかどらない調査にブチ切れるテディを相棒のチャックがなだめつつ、嵐の到来で離島もならず、施設の電源が切れる混乱に乗じて二人は潜入捜査を続けていく。

 テディにはこの失踪調査をきっかけにして、もうひとつの目的があった。それは、かつて最愛の妻を失うことになった火災の原因である放火魔レディスの消息を探ること。
 いまだに妻ドロレスへの想いを消化しきれていない彼は、さらに過去においてもっと重いトラウマを抱えている。第2次大戦時のドイツ、ダッハウの強制収容所の解放に立ち会ったときに目撃したユダヤ人になされた非人道的な虐殺の現実と、その衝撃からドイツ監視兵たちを部隊で集団殺戮した記憶…。

 自らの殺人行為への罪の意識を持ち続けている彼は、この収容所に上陸して以来、収容所の情景と妻の出てくる悪夢に悩まされ、精神的に不安定になっていく。
 この悪夢の中の情景がさまざまな矛盾と謎を示唆し、やがて優秀な保安官然としていたはずのテディの瞳が、困惑と恐怖に揺れ出し、偏頭痛と手の震えに悩まされ始めるのと並行して、捜査と捜索が深まっていく。

 頻繁になる妻の幻影、ダッハウで見た少女の声の幻聴、失踪していたレイチェルとの邂逅、姿を消した相棒チャック―――。

 この収容所で医師として働いていたレイチェルは語る。ここでは「私は正常だ」と言えば言うほど、疾患として扱われていく。この島を出ることは決して叶わないのだ、と。同時に、実はナチスドイツがユダヤ人に施していたような人体手術、ロボトミー化の実験がこの島の患者になされている事実が明らかになる。確かに医師団の重鎮のひとりは、ネーリングというドイツ人であった。
 その秘密を知る者は、体制に順じない限りすべてが「精神異常」による言動と捉えられ、そして薬を処方、最終的には脳手術を施されるのだという。

 テディは、その真相を暴き、レディスを探し出し、そして相棒を救い、レイチェルを救い、レディスの情報をくれたノイスを救って島から脱出することができるのか。レイチェルが残したメモの意味は?
 また、彼が見る過去の幻影を克服できるのか…。そこに現れる矛盾の真実とはななにか…(これがなかなかヘビーな過去)。

 四方を海に囲まれた孤島、台風の風雨、幻影の妻のびしょ濡れの様子、水を恐れるテディの性癖、と「水」がひとつのキーワードになっている。
 また、東西冷戦の激化する1950年代の時代設定、島で重犯罪者を収容しているC塔が南北戦争時代に使用されていた城塞であること、保安官ふたりがそれぞれボストンとシアトルから来ていることなども、ナチスの過去とともに重層的な意味を持たせており、丁寧な背景の作り込みだ。

 話題の謎解きについては、「精神疾患」の患者を収容しているという舞台からも自然な流れの”どんでん返し”といえるし、やや荒い展開と思われる捜査の進捗にも伏線があって、かっちりした造り。(個人的にはラストはちょっとあっさりしていてもの足りないが…)

 ただ、非常に不満だったのは、映画の始まる冒頭に出てくる、これから観る人たちへの”アドバイス”。
 (正確な文言は覚えていないが)「見えるものは脳が見せる錯覚です」とか、「手の動きや視線などにヒントが隠されていますので注意してみてください」とか、はっきり言って余計なお世話!!蛇足!!
 おかげで早くに”驚愕の真相”とやらが見えてきてしまい興ざめもよいとこ。作品としてはそこそこに楽しめるものだったのに、台無しである。まあ「結末を決して話さないでください」は許されるとしても、”そっちが冒頭から結末を導いてるじゃないか!!”と言いたい。

 (本国での公開にもあったのか分からないが)ここまでアテンションしないと分からないほどに日本人は「おバカ」なのか?(と思われているのか?)
 解らなければ解らないでよい。逆にそうした造りになっているところがこの作品のよさだとも思うし、解釈は自由だ。どうしても気になるのであれば、何度だって観ればよい(昔と異なって毎回総入替制になっているのがつらいとこだけどDVDもあるし)。それとも「わからない」とクレームでも来るのか??

 いつからこんなに”わからないこと”に過剰反応する社会になったのだろう。わからないことがたくさんあって当たり前だし、たくさんあるからこそ楽しいのに。
 この作品も、ちりばめられた手掛かりを自然な流れの中で見つけてこその醍醐味だ。たとえ見落としたとしても、後から思い返して納得、でよいし、そこにさらなる鑑賞後の余韻も生まれるはず。そもそも最後まで見つけられなくても充分に楽しめるストーリーになっていると思う。
 ミステリさえも”手とり足とり”するなんて世も末だ!

 映像は基本的にモノトーンで統一、テディの見る幻視や回想が逆に鮮やかなカラーとなっていて、対比が上手い。
 音楽はマーラーの重厚な調べが効果的に使用されている。効果音の使い方もサスペンスとしてはGOOD。
 配役ではディカプリオの演技もさることながら(醜く歪む表情がうまいので、キリッとした時は確かにカッコよくなる…(笑)このあたりがいいね)、『ガンジー』でアカデミー賞受賞のベン・キングスレーがやはりすばらしい!(ちょっと品のある、蝶ネクタイの似合う知的役柄はぴったり)ほんとに名優、大好き。

 「狂気」の定義とは何か、そして「現実」とは何か、それを誰が、何を基準に判断するのか、誰の判断を信じればよいのか、薬の作用の影響とその是非…。
 現代よりも、そうした病についての理解と解明、分析と診断の手法が進んでおらず、管理する側の都合から薬物投与と脳外科手術が安易に行われていた時代、その状況をうまく捉え、追い詰められていく人間心理とトラウマの存在を交えて構成した手堅いサスペンス。

 ラスト・シーンには、観た人が各自の解釈によって”真実”を持てる余白も多少残されている。(個人的にはもっとあいまいな”真実”の方が作品としてはよかったが)
 ふと『カッコーの巣の上で』を思い出した。
 テーマに対するメッセージの強さ・重さは及ばないけれど、その意味でも冒頭の”アドバイス”さえなければもう少し評価できる作品だったのに…。


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