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アンダーでアートな映像が魅せる ―『告白』―

『告白』 監督 中島 哲也

Kokuhakuチラシ
 関係者の独白形式で構成された湊かなえ氏のベストセラー小説『告白』、優等生的なヒロインのイメージが強い松たかこが、その心情は理解できるものの行動としては賛否分かれる、この恐ろしいまでに抑制された復讐を実行する”教育者”をどう演じているのかとともに、作りがやはり気になって(笑)。

 公開からかなり時間が経っているし混雑はそれほどでもないが、入っている客の年齢が幅広い。
 
 基本的に原作に忠実なストーリー展開(あらすじは割愛。先に小説『告白』で)、映画の筋を楽しむならば、小説は後回しにした方がよいかもしれない。
 脚本も監督が手掛け、映像として残す箇所、加えるシーンの取捨選択が無駄なく、ほどよくまとめられている。
 その中で、牛乳の強制(”造られる”優良校)、教師と生徒のディスコミュニケーション、いじめ、自殺、不登校、現代の学校が抱える社会問題がいくつも浮かび上がる。このあたり、監督の原作解釈とともに、決して大げさではなく、押しつけでもなく描き出されているのはうまい。

 ただ、なによりも圧倒されたのが、その映像美!

 全編を通してほとんどモノクロに近いようなアンダーな画面、ハイスピードカメラ映像の多用とその使い方の妙、そして何よりも一場面一場面がまるでそれぞれ一枚の写真を思わせるような見事な構図。また所々に挿入される空、雲、太陽の映像や水の景色がもたらす象徴性が物語に非常に効果的に響いてくる。
 カメラアングルも、目線のものと俯瞰からのものとを微妙に使い分けており、ストーリーと映像自身のメリハリを作る。
 この、切り取られたショットを連続して観ているような印象が、主体の変わっていく物語の切り替えを自然なものにし、同時にそれぞれのシーンをとても印象的なものにしている。
 (なにか、どこかで観たような印象を与える映像…何の作品だったかどうしても思い出せないが、一部なぜかV・ヴェンダースの『ベルリン 天使の詩』が頭に浮かぶ)

 携帯電話の画面映像の出し方も、現代の中学生の生態をよく表しつつストーリーを円滑にし、松たかこ演ずる女教師の、どこか時代遅れでレトロな雰囲気を持つ(ちょっとダサめの)衣装や、語る主体が入れ替わっても違和感のない、子どもたちの共通した柔らかい語り、少年Bの自宅の白い美しさなど、細やかな演出が隅々に行きわたり、さらに豊かなイメージを醸成する。

 少年Aをはじめ、子どもたちの演技も自然でとてもよい。気張りが見られず、日常そのままの生活を切り取ったかのようで、なおさらに、自身の権利の主張は外さず、そこに発生する義務については無自覚な中途半端な幼稚さや、教師の勝手な思い込みやデリカシーのなさに逆らうでも異議を唱えるでもなく、冷めた視線で受け流して(つまりは無視して)いく狡知、笑いながらいじめを実行する残酷さ、そして自身が傷つくことには敏感なナイーヴさが、恐ろしいまでの現実感として迫ってくる。
 同時に親をも含む大人の身勝手に傷ついていく、あるいはそれを自分の言動の理由にすり替えていくところも痛々しく描かれる。
 
 彼らのそうした姿を最も冷静に(”過ぎる”くらい)、そして正確に見ているのが、我が子を殺された女教師であり、実は彼らにとって、最も自分たちを(よくも悪くも)理解している存在だったかもしれない「皮肉」も浮かび上がってくる。
 ここは抑えた演技の松たかこが頑張っており、表情の消えた彼女が生徒との会話の中で、一瞬一瞬に見せる憎しみや嘲り、独り道にくず折れて泣くシーンなど、自身でよく創りこんでいる。(表情が歪むそのやり方にはどこか父幸四郎の顔の作り方を彷彿とさせるものを感じたのがちょっと面白かった)

 また、小説よりも復讐を果たそうとする教師の執念が強く感じられる設定になっている気がする。
 欲を言えば我が子を溺愛する美しい”バカ母”として木村佳乃演ずる少年Bの母親は、もう少し原作の自己完結ぶりが活かされてもよかったかな、と(ちょっと彼女の存在がもったいない…)

 ラストで松たかこがぽつりとつぶやくひと言は映画オリジナル。
 監督は、ここでその”ひと言”が指し示す範囲の判断を観者にゆだねた。復讐は本当になされたのか、女教師が本当に少年Aに「再生の機会」を与えたのか―――。この時の松たかこの泣き笑いような表情はとてもよい。
 原作にはない、ある意味もうひとつの曖昧さを残して終わるラストの余韻はみごとな解釈だ。

 中島氏は初めて観た監督。多くのCM制作も手掛けているらしい。
 なるほど、ハイスピードの効果的な使い方や映像に付与される“シズル感”の巧みに納得。

 もちろん原作がよくできていることが大きなポイントだが、この作品、構成、映像、音楽ともに、非常にアーティスティックに仕上がっていて”映画として”堪能できる。一見の価値あり!


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