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突き詰めた空間構成と墨の絢爛 -『丸山応挙展』-

『丸山応挙 ―空間の創造 展』 (三井記念美術館)

Oukyoチラシ
 建築そのものが重要文化財の美術館。開館当時からどうもタイミングが合わずにやっと初の訪館。
 江戸時代からの商店の余韻を残しつつ、新しいショッピングビルなどが混在する日本橋へ。いつ来てもどこかゆったりしている空気のこの街は好きだ。

 入り口はやや大仰な印象ながら、深い茶色の木造空間は、それだけでひっそりと落ち着いている。外光を隔てる閉ざされた窓はやや暗すぎるような閉塞感がないでもないが、繊細で保存の難しい日本の美術品の保管と展示にはよいのだろう。

 この三井が誇るコレクションのひとつである国宝≪雪松図屏風≫をクライマックスに丸山応挙の作品が集結、彼の作品に描かれる”空間”に注目した展覧会。
 『上村松園展』の反省を活かせず閉館日ギリギリ、今回新発見の≪松鶴図屏風≫と重要文化財の≪雲龍図屏風≫、≪雪梅図≫を見逃してしまった…(泣)。
Oukyo_1
 かといって後半に展示されるものもいずれも劣らぬ大作。2度行く覚悟と時間とお金の余裕がないと制覇は難しいのが、日本画の展覧会の痛いところだ。

 展示室1では、若き日に勤めていた玩具商尾張屋で覗きからくり用の眼鏡絵を描くことで習得した遠近法の作品が並ぶ。

 この西洋銅版画を手本とした極端な遠近法の作品に、改めて江戸末期に活躍した画家であることを再認識する。
 からくりで庶民を楽しませるために京都周辺の名所を描いたそれらは、建物の非常に細やかで緻密な描写と、その空間の中に行きかう人々の活き活きとして大らかな筆致によってその地の空気を伝えて楽しい。殊にそこに描かれた人々の、それぞれの動作や姿態は観ていて飽きることがない。
 ≪五条橋大仏殿眺望図≫などは、欄干に乗りだす人、橋の真ん中に座り込む人、大仏に向かって正座して手を合わせる人、大仏そっちのけでしゃべっている人、その場の喧騒が聞こえてきそうな臨場感がある。

 展示室2では彼の絵画における空間理論が綴られた書誌を、展示室3では黒い和紙に金泥で描かれた≪富士≫の茶掛けを観られる。

 書誌は細かく読まなかったが(読めないし(汗))、小さな紙片にびっしりと文字が書かれていることに、内容よりも筆でここまで細かいメモが可能になるそのさばきという変な所に感動していた(笑)。
 茶掛けは三井らしいコレクション、渋く貴重な作品は小さいながらとても存在感がある。茶室に置かれた時の空気を感じてみたい一品だ。

 いよいよ第4室から、応挙の空間理論をその大型作品に体現していった作品たちの展示。

 重文≪雨竹風竹図屏風≫。
Oukyo_2 2隻の中央に空間をおき、右隻には動きのある竹を、左隻にはすっくりと伸びた竹を描くことで、視線がその中央の空間を軸に、墨の濃淡で表された奥行きとともに回転しつつ空間を感じられるように構成されている。その眼の動きとともに、驟雨に濡れ、かすかな風に揺れる笹の葉の湿度もが伝わってくる。
 近寄ってみれば竹の節もその葉の筆使いも、ざっくりとした無頓着ともいえそうな筆致であるのに、それらがひとつの画面として表す空間構図は緻密で堅固、さらにその計算が目につかない自然さを持っている。

 同じく重文≪波濤図≫は、迫力だ。
Oukyo_3 左右の隻にそれぞれ鶴が配されているが、何よりも波のうねりとその波濤の勢いがみごと。前に立っていると、その動きにこちらの足元が引き込まれていきそうになる。静寂の中、波の砕ける音だけが響く。
 全32面に渡る襖絵のうち12面の展示となるが、これは全幅に囲まれたら立っていられないだろうな、と。
 ほとんど水墨の中、3羽の鶴の頭頂の赤が効いている。

 そして予想していなかった出逢いに狂喜♪
 こちらもうっかりして観逃した根津美術館の改築記念展の最後の章…。秋には久しぶりに逢えると思っていた≪藤花図屏風≫がここに出張してきてくれていた。ラッキー!

Fuji_leftFuji_right

 照明とその近い距離のせいか、かつて根津で観ていた記憶よりも背景の金箔が深い錆色を放つ。
 重厚で鈍い光の中に浮かび上がる藤の枝花。
 花と小枝の一片一片の緻密な描写、背景の金が透けるほどの薄墨がしかし力強く、奔放に伸びる蔓枝を描き、右隻は下から上へ、左隻は上から下へと視線を誘導、紫と紺の美しい花と細い蔓が余韻となって中央の空間へと螺旋を描いて行く…。
 ほぅ…とため息しか出ない…。やっぱり応挙の屏風絵ではこれが最も好きだ。目前で座り込み、離れては近づき、しばらくうろうろ。去りがたい逸品。

 4室に心を残しつつ(笑)、インターバルの展示室5では、彼の空間に対する意識がその視点という形で観られる≪淀川両岸絵巻≫と、小さな画面に創られる空間として≪山水図≫や≪竹雀図小襖≫を紹介している。
Oukyo_4
 ≪淀川両岸絵巻≫は、淀川の流れに沿って伏見から大阪京橋まで描いていくありがちな風景画だが、両岸がそれぞれ川の中央からの視線で描かれているので、どうしても一方がさかさまになる。ちょうど絵巻を中央でゆるやかに谷折りにすると両岸が揃うといった感じか。これはなかなか面白い。川を行く船に乗る人々も、よく見ればとてもバラエティに富んでおり、簡略化された描写なのに、その細やかさは先の眼鏡絵に通じている。拡大鏡を手に観たくなる。

 ≪竹雀図≫はとにかく雀が可愛らしい。チュンチュンという鳴き声が聞こえそうな動きのある3羽が小さな小さな襖に無限の空間を感じさせる。嘴以外は、輪郭が描かれていない雀は、羽毛の柔らかさを感じさせてリアルだ。

 小さな第6室には、三井が多くを所蔵する応挙の遺印が一堂に並ぶ。大小さまざまな印は、その隣に展示される≪山水図額≫に押されているものを探し出したくなる楽しい趣向になっている。

 最後の展示室7は、いよいよ国宝との対面と、大乗寺からやってきた≪松に孔雀図襖≫(これも重文)の豪華な大作でしめられる。
 共に松、そして最高傑作と言われる2点でのクライマックスは憎い演出。

 しかしながら、個人的には≪雪松図屏風≫がそれほどに響かない…。確かに中央に空間を配し、左右で視線を回遊させるその構図は完成されている。松に積もった雪の冷たさも伝わるみごとな作品だが、”まとまり過ぎて”いてつまらない…。

Oukyo_5 あまりにかっちりとおさまり過ぎて、なんとなく松の枝も硬直しているように見えるのは、鑑賞眼がないせいか…?
 これならひいきと言われても≪藤花図≫の方がよほど動きがあって美しく、私にとっては宝だなあ、と。

 ≪松に孔雀図襖≫は全16面、金箔の華やかさもあってまさに圧巻。
Oukyo_6 松のたくましい幹と伸びる枝ぶり、針のように鋭い松葉、誇り高く立つ牡孔雀。3羽の孔雀のうち牡の一方は横向き、すっと伸ばされた首の気品と静的な形態、その羽はまるで線で区切られたように飛びだすところのない整った形態に収まり、いま一方は正面やや右寄りのちょっと珍しいアングルから動きが生まれ、それに呼応するように羽も揃わないかたちで描かれている。この対比がみごとに襖の大きさと松の枝の動きの中に収まっている。
 すべてが墨で描かれているのに、松の濃い緑、そして孔雀の輝くエメラルドグリーンがそこに浮かんでくるかのようだ。さらに鈍い金の単調な背景が豊かな空間を拡げていく。金と黒が織りなす限りなくゴージャスな世界。

 副題の「空間の創造」がとても実感できる展示の構成だった。
 作品との距離も近いので、その一見杜撰とも思えるような大らかな筆跡や墨の濃淡のグラデーション、描き分けなどもじっくり堪能できる。

 それぞれが大きいため展示数は多くないが、逆に一つひとつを丁寧に観られるのは嬉しいし、まあそのクオリティたるや豪華のひとこと。
 ”写実”の徹底、そして画面としての構図へのこだわり、応挙の画に対する強い想いを見た。
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テーマ : 絵画・美術
ジャンル : 学問・文化・芸術

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