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半世紀アメリカ司法を牛耳った男の光と闇 ―『J・エドガー』―

『J・エドガー』 監督 クリント・イーストウッド

J_Edgarチラシ
 いつも思っていることだが、ディカプリオは“プリンス”役でない方が好きだ。その演技力が思いっきり感じられるから。
 美しいブルー・アイズは非常に魅力的なんだが、彼はアクの強い役柄の方が絶対によい。

 ということで、その実績と同じくらい悪評も高かった“超タカ派”、FBIを創設し科学捜査の基礎を築いたフーバー長官をディカちゃんで、イーストウッドが描くという内容が気になって。

 1920年代から死を迎える1972年まで、実に50年もアメリカ合衆国司法のトップに君臨し、8代もの大統領に仕えた(?)フーバー。
 政治権力に癒着しつつコネと裏取引の絶えなかった杜撰な警察機構を、きっぱりと独立させ、指紋蒐集や証拠品の科学捜査による分析とデータ管理によって飛躍的に犯罪検挙率を高め、FBIを創り上げた一方、それらの功績を独占、賭博好きでギャングとの癒着も取り沙汰され、かつ盗聴と諜報により、大統領をはじめ、権力者たちの私生活におけるスキャンダルを収集、その「脅し」を盾に、権力の座にとどまり続けたフーバー。(現在ではFBI長官の任期は最長でも10年に限定されているとか…)
 
 冷戦期にはコミュニストを徹底的に弾圧、最期までキング牧師を敵視し、彼のノーベル平和賞受賞時には、得意の“フーバー・レポート”で辞退するよう強迫したともいわれる、強烈な光と闇を体現した人生。
 歴代大統領が煙たく思いながらも排除できなかったこの人物は、死後もホモ・セクシャル説を含め、毀誉褒貶の著しい評価が与えられているようだ。

 その彼の生涯を、70年代晩年に自伝を出すための口述筆記を依頼して、記者に語りだすところから過去がフラッシュバックして、「現在」あるフーバーと「過去」に昇りつめていくフーバーとがクロスオーバーして描写される。

 そこには、出逢ってすぐにしたプロポーズを断られながらも、個人秘書として彼の生涯を「仕事」で支えた女性ヘレン・ギャンディ(ナオミ・ワッツ)、副長官として公私共に過ごし、同性愛の相手ではないかともいわれた相棒クライド・トルソン(アーミー・ハマー)、そして吃音の内気な青年であった彼に、“男らしく”“正義感あふれる”“権力者”であることを望んだ母アンナ・マリー(ジュディ・リンチ)などが配され、彼が取り扱ったさまざまな事件のうち、アメリカ中を巻き込んだ悲劇リンドバーグの子供の誘拐事件を主軸に、連邦犯罪法の改定や、科学捜査の導入を実現していったフーバーの、やや強迫観念的に偏った人格・思想形成と、警察機構FBIの最高権力者としての光と闇を照射する。

 冷戦時代はともかく、その極右的な言動は、激動の70年代までを知らない私からは、すでに帝国主義アメリカを体現しているようでどうしてもアブナイ感じと嫌悪を持ってしまうが、少なくともアメリカという“国家”を愛し、犯罪を撲滅する情熱にかけては、人後に落ちない純粋さ(だからこそ危険なのだけれど)を持っていたのだろう。

 権力に媚びず司法を独立させ、州法を超える連邦法の適用など、警察機構を強化することに文字通り人生を賭けた一方、自身は権力を掌握し、超法規的な手段を使い続けた彼の、一見矛盾しながらも根底では相通じる強引な生きざまを、相棒のクライドを除けば親しい友もなく、孝行者といえば聞こえはよいが強度のマザコンともいえる極端で独善的な性格に重ねて、ディカプリオが好演している。

 彼を理解し支え続けた、ただふたりの側近役も、50年に渡る容姿の変化を特殊メイクで造りながら、出過ぎずしっかりと主演をささえている。(このメイクはちょっとわざとらしい感じがなくもないが…)

 しかし、もう少しエドガーの権力へ登りつめる過程やその手腕、大統領たちとの駆け引きが楽しめるのかと思いきや、どちらかというと、この人物の善悪や強弱を等価に見せていく人間描写に寄っている造りだ。
 このためか、ほのめかすだけと言われていたクライドとのホモ・セクシャルを思わせる恋愛感情的な交流を表すシーンが印象強く(いやー、観ている方が恥ずかしくなるような痴話喧嘩とか;笑)、BLものか…?と思ってしまいそうな鑑賞後。

 大統領ですら盗聴にかけ、脅迫を以って自分の権力を保持し続ける強引さと自己完結型の正義、一方で吃音で女性的(女装への嗜好があったこともほのめかされる)な弱さや繊細な神経を持つ人物として表したかったその意図はよく分かるのだが、フーバーの人格設定は、ある意味ティピカルにとどまり、いまひとつ作品としてのまとまりにもインパクトにも欠けるかな、と。

 まあこれはクリント・イーストウッド監督の作品のいつものテイストとトーン。
 強い告発も称賛もせず、静かに突き放した視点から描くことで、その人間性を浮き彫りにする“ヒューマン・ドラマ”な手法、持ち味といえばそうなのだが、たまには違ったアプローチでもよかったのに…と。

 また、この50年間のアメリカの歴史に詳しくない私にとっては、フラッシュバックし、あるいは現在にオーバーラップされる彼の足跡を追うのがなかなか大変だった。あまりに断片化されずぎて、ストーリーが荒く、混乱した印象が残る。
 その映像手法の作為の方が目につき、描かれている内容に意識が行きにくい。もう少しシンプルに時系列を並べるシーンがあってもよかったかも。

 アメリカアカデミー賞が話題の中、確かにこの作品はちょっと厳しかったかな(ノミネートにすら入っていないし)。ディカプリオの役作りは光っているのに、ちと惜しい…。
 とはいえ、荒いながら半世紀にわたるアメリカ“らしい”歴史の一片に触れるにはなかなか興味深い作品だ。

 さて、今年のアカデミー賞、『アーティスト』がみごと、作品賞、監督賞、主演男優賞など5部門獲得!
 ヨーロッパ作品がここまで独占する快挙、ちょっと嬉しい♪
 また、メリル・ストリープ三度目の受賞、まったくすごい、としか…。確かに『マーガレット・サッチャー』、そっくりだし、クイーン・イングリッシュも鮮やか。

 この2作は公開が楽しみだ。
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