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現代に生きた“江戸人”からのメッセージ ―『憩う言葉』/『粋に暮らす言葉』―

『憩う言葉』
『粋に暮らす言葉』 杉浦 日向子 (イースト・プレス)



 彼女の作品はほとんどすべて所蔵しているのだが、“粋な”装丁につい購入(笑)。
 ああ、なんておおらかで、色っぽい画だろうか。金と銀のエンボス加工も効いている。

 これは氏の生前の発表作品から「ことば」を抜粋、間にマンガからのシーンと、彼女の写真が挿入されている。
 「ことば」は1ページに一文。端的で気負わないそれらは、煩雑さと慌ただしさの現代に、一陣のさわやかでホッとする空気を送り込んでくれる。

 『憩う言葉』
  5歳も年下の妹に“敵わなかった”とあっさり兜を脱ぐ、ステキな兄の「はじめに」から始まる。
  ここだけでも何やら切なく温かい気持ちになる。

  1憩う
     ・今の大人は、真面目に命を削って遊ぶことを知らない。
     ・ちゃんとあそぶのは、ちゃんとはたらくよりむつかしい。
      あそんでいるつもりでも、多くは、あそびがしごとになっている。


  2呑む、食べる
     ・すこし呑もう、たっぷり眠ろう。明けぬ夜はないのだから。
     ・けだし、恋愛と酒は、手間をかけた方が面白い。
     ・「普通に愛したって愉しいけれど、丁寧に愛したらもっと愉しいでしょ。
      食べ物だって、そおよ」
     ・腹を満たすのではない、時を満たすのである。


  3男と女
     ・ランク付けすれば、愛は、他人に横どりされるくらいなら、
      壊してしまうタイプで、男女間に置き換えれば、最低。
      恋は、発展途上。生殖が完了すると急速に冷めてしまうので要注意。
      色は、人情の機微を知ってこそ楽しめる、卒業のない生涯学習といえる。
     ・もてようと思ったら、やせ我慢しなくちゃ(笑)。


  4しあわせな隠居
     ・抹香臭い「無一物」やら「清貧」とは、まるで違う。
      世俗の空気を離れず、「濁貧」に遊ぶのが隠居の余生だ。
     ・体にいいことはしない。それから体に悪いもの、とくにアルコールは
      積極的に取るようにしています。


  5杉浦日向子
     ・だから江戸を調べているという感覚じゃなくて、
      思い出しているっていう感じなんです。
     ・何かわからないときとか、わからないっていう状態そのものとかが、
      けっこう自分のなかでは、いちばん豊かな状態だったりするんですよね。


 『粋に暮らす言葉』
  妹は江戸に帰り、そこから遠隔操作をされているのではないか、と没後6年たった今でも新鮮に「ことば」を受け取る兄の愛情豊かな「はじめに」から始まる。
  「もっと楽に生きて」というそのメッセージに、なにやら救われる、泣きたくなる。

  1粋に暮らす
     ・まっすぐだとちょっと曲げてみる、まったいらだったらちょっと
      デコボコにしてみる、それからのっぺりしていたら穴を開けてみるという
      逆のことが風流なんです。
     ・本来の粋というのは、自分の中で熟成され、個人個人で基準が違うもの
      なので、粋のマニュアルはないんです。


  2楽に生きる
     ・なんのために生まれてきたのだろう。そんなことを詮索するほど
      人間はえらくない。三百年も生きていれば、すこしはものが解ってくるの
      だろうけれど、解らせると都合が悪いのか、天命は、百年を超えぬよう
      設定されているらしい。
     ・わたしたちはつねに右肩上がりでないといけないという幻想に
      さいなまれている。でも本来は去年と同じ年収で暮らせる社会のほうが
      幸せなんです。


  3江戸の魅力
     ・江戸は手強い。が、惚れたら地獄、だ。
     ・歌舞伎や江戸の読み本は皆そうですけど、起承転結の結がないんですよ。
      起承転転とか起承承転とか、それでおわっちゃうんですよ。
     ・江戸って、三百年の退屈なんですよ。
     ・葦は「悪し」に通ずを忌みてヨシとも読む。
      かつて一面の葦の原であった地を「吉原」と名付け「悪所」と呼ぶ。
      アシもヨシも同じこと。ままならぬのは人の業。


 もう抜粋だけで充分ではないか?

 強くてしなやかで、そして軽やかで重たい。まさにその全身全霊で「江戸」を体現してた彼女を再び、そしてこうして抜き書きされたことでより強く感じることのできる、小粋で贅沢な冊子だ。
 ときにクスリと笑い、ときにドキリとうろたえ、、そしてときにしんみりと共感し、ときにホンワリと救われる。

 苦しい時、悲しい時、泣きたいとき、笑いたいとき、ぱらりと開くだけで、豊穣な江戸の空気が肩の重さを取り除き、同時に生きることの重みも再認させる。
 
 いいじゃないか、それで。
 もうちょっと息抜きしてみようか。

 日々を真摯に、“がんばらない”、元気を与えてくれる。

 泣いても笑っても、所詮はみんな生まれた時から死に向かっている。
 だったらもう少し粋に行こうじゃないか。

 書棚にしまっておくのはもったいない。(人に教えるのももったいない;笑)
 すぐに手に取れる場所に常備したい2冊。

 なお嬉しいのが、挿絵として多く使われているのが、最も好きな作品のひとつ『百日紅』であること。
 北斎とその娘お栄を自由に描いたこの作品、殊にお栄の魅力がすばらしく、私の北斎像は実はここに拠っていたりするもの。また読みなおしたくなる。


  
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テーマ : エッセイ/随筆
ジャンル : 本・雑誌

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ありがとうございます

杉浦日向子さんは、好きな作家さん。その新作を紹介してもらって嬉しいです。

< 強くてしなやかで、そして軽やかで重たい。まさにその全身全霊で「江戸」を体現してた彼女を再び、そしてこうして抜き書きされたことでより強く感じることのできる、小粋で贅沢な冊子だ。
 ときにクスリと笑い、ときにドキリとうろたえ、、そしてときにしんみりと共感し、ときにホンワリと救われる。
 苦しい時、悲しい時、泣きたいとき、笑いたいとき、ぱらりと開くだけで、豊穣な江戸の空気が肩の重さを取り除き、同時に生きることの重みも再認させる。>

きゃぁ~ と黄色い声をあげそうになるchat_noirさんの文章。
早速、読んでみたいと思います。勿論『百日紅」も!!

余談ですが、今「豆腐小僧双六道中 ふりだし」を読んでます。
面白くないわけじゃないんですが、何故か疲れる。。。 
あともう少しですので、読みきりたいと思います。

Re: こちらこそ!

あんごま きなこ さま

こんばんは!
御礼申し上げたいのは私の方です。
嬉しいコメントをありがとうございます。

よいですよねー杉浦日向子氏。
以前にもちょっとふれましたが、ほんとうに早世が悔やまれる方です。
(まあマンガ引退宣言のときにもショックを受けたのですが)

新作といっても既刊のものからの抜粋ですけどね。
装丁がとてもよいので、惜しくはないです(笑)。
プレゼントにしてもよいくらい。

『百日紅』未読ですか。ではぜひぜひ!
いまならちくま文庫(だったか)からもでているかと。
もうめちゃくちゃな北斎と、変わり者お栄に惚れこむ作品です!
粋で洒脱でたくましくておおらか、なのに繊細でなんとも切ない、江戸てんこ盛り。

また明治へと移り変わる時代の人々を描いた『合葬』や『ニッポニア・ニッポン』、
赤穂浪士の討ち入りを検証した短編の入る『ゑひもせす』あたりもお気に入りです。
そうそう、怪談ものの『百物語』も独特の風情で…

ってきりがなくなります(笑)。

『豆腐小僧』、

> 面白くないわけじゃないんですが、何故か疲れる。。。 

いろいろ言い訳しましたが、そのひとことに尽きますね…。
すごくその気分、わかります~
そして私の場合、その疲れが「イライラッ!」に…(笑)。

「おやすみ」までは行けそうですか…?
やわらかいけれど、端的なひとことのご感想、楽しみにしています。
(「疲れ」を共有したいだけ…か?私;笑)

送ってくださるメッセージ、なによりの励みです。
ちょっとこのところ停滞気味(読了ものは溜まっている…)なので、
頑張ります~。
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