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追記:フジタを満喫できる小部屋 ―(ミニ展示)『藤田 嗣治展』―

『藤田 嗣治展 人物と動物 目黒区美術館所蔵作品より』 (目黒区美術館)


 先の『ラファエル前派からウィリアム・モリスへ展』と同時開催していた所蔵品による展覧会。小さな一室だけの展示ながら、その内容はあまりに豊かで楽しく、ステキだったので、追記として。

 若くしてフランスで成功、その名声から日本の代表的画家として戦意高揚のための戦争画を描いたことが、戦後一転してその非難を一身に負うことになった彼は、再度渡仏、日本国籍を捨てて、フランス人として生涯を終えた。
 おそらくは日本に対して愛憎半ばする感情を持っていたであろう彼の作品は、決して日本に多く残されているわけではない。
 その中で、大戦後にGHQのメンバーとして来日、藤田をコレクションしていたフランク・シャーマンのコレクションの多くをこの目黒区美術館が引き継いだという。
 2010年にこのコレクションの紹介を兼ねての展覧会が開催されていたのだが、観る機会を逸していた。その中から小規模ながら今回の展示に逢うことができた。

 油彩は3点、ほかに水彩のよい作品、水墨の屏風、そして何より晩年の陶器の作品がとても楽しく、企画展と並ぶくらいの充実した内容となっている。

 油彩は≪動物群≫と≪10人の子供たち≫そしてちょっと趣の異なる≪軽業師D≫。いずれも10体の対象を描いている2作が並んでいるのは何とも面白い。

 ≪動物群≫は、兎や狐、犬が跳ねている姿が、彼らしい写実と躍動感で描かれる。そこまで激しさはなく、なんとも大らかでほのぼのしているが、代表作のひとつ猫の争いを描いた≪猫(闘争)≫を想い出す。また、なんとなく≪鳥獣戯画≫を彷彿とさせ、日本画の流れも備えている彼の特徴がよく出た一作だ。
 ≪10人の子供たち≫は、国籍もさまざまな10人の裸の子どもが思い思いの姿で散りばめられている。西洋の天使画のようでもあり、日本や中国の稚児画のようでもあり、すでに東洋と西洋の間を自由に越境する彼のセンスが生きている。
 ≪軽業師≫は、高いポールの上に立つ軽業師を、小さな縦長の画面に収めた一作。観覧席からひたすらに上に伸び、3階くらいまでの階を背景に重ねがら伸びるポールとその上の芸人。観覧席は閑散として、演技そっちのけでいちゃつく人、飲んだくれて眠っている人など、なんとも場末のサーカス小屋のような空気を漂わせながらも、なぜか哀しみの中に温かい楽しさを持っていて魅力的だ。

Fujita_1 水彩では、初期のモディリアニを思わせる造形化された≪赤毛の女≫が好み。
 ≪メキシコの少年≫、≪殉教者≫、≪君代のプロフィール≫は、「真珠色の肌」とフランスで絶賛されていた時代の繊細な筆の輪郭と独特の陰影を持つ秀作、≪鶴≫は、金と赤と緑の雲のような背景に描かれた丹頂と黒い鶴がまるで日本画のよう。
 ≪人形を持った少女≫は、日本を離れ、フランスに永住を決めてからの藤田得意の子ども図である。
 制作年代は不明ながら、おそらく初期であろう≪芸者と泥棒≫は、落語の一場面を描いているようにも見える、ユーモラスなもの。気の強そうな芸者の表情と、それに臆しているような泥棒のおずおずとした視線が、立場を逆転させていて、笑いを誘う。

 版画では、≪カフェ・ドゥ・ラ・ロトンド≫が、当時のフランスのカフェでの深夜の狂態と喧騒を表し、≪猫のいる自画像≫では、おかっぱにピアスをした、トレードマークともいえる自画像が、終生愛した猫とともに描かれる。

 そして陶器。
Fujita_2 濃紺に白い線で描かれた美女8人が楽しめる白い8枚組絵皿、アイボリーの地に、青い顔料の椰子の木のような木に蛇がまきつき、黒人の男とと白人の女が佇む南国のイメージを持つ≪アダムとイヴ≫の絵皿、長靴をはいた猫かと思わせる、洒落た衣装でパイプをふかす猫を中央に、外側の側面にそれを仰ぎ見ているようにネズミが描かれ、しっぽは内側に入っているというお茶目な造りの角皿≪猫とネズミ≫、観ているだけでワクワクしてくる。
 極めつけが、白地に頭が燭台となった女性像を描いたシンプルな壺≪燭台女≫。その単純化された女性像がとても美しくて可愛くて、超好み!持って帰りたい一品だ。

 墨絵は屏風になっている2作。≪馬図≫はそのデッサン力のみごとさを思わせる勢いのあるもの、≪鯰と蛙の図≫は、おおらかでこれまたユーモアを感じさせるみごとな日本画だ。

 このほか、藤田が知己に送ったハガキや子供向けに造った玩具≪キス・ミー≫なども展示されており、彼のプライドの高い芸術家精神と、生真面目な側面、そして豊かな遊び心や子どもへの愛情が共に感じられる内容になっている。
 敢えて彼の代表作である裸婦像や静物画を展示していない(コレクションには当然あるらしい)のがまたよい。 

 小さいながらも多分野、多岐にわたる制作法で魅力あふれるこれらの作品を今後もここ目黒で観られる機会があることに、とても嬉しくなって、閉館アナウンスの流れる美術館を後にした。

 実は本展よりも楽しんでいたかも…(汗)
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テーマ : 絵画・美術
ジャンル : 学問・文化・芸術

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お久し振りです(笑)

 本格的な美術展批評と絵画論ですね(笑)小生も、かつて高校時代画家に憧れ、
京都芸大出身の美術教師のアトリエに通った頃の記憶がよみがえります。結局才能がなくて、同志社美学に入学。もの書きとして、いい経験になっています。  
 今、リンク集を作成中です。本日7/28、私のブログ上にリンク設定しました。アクセス・アップにもなるし(笑)これからも、よろしく。また、遊びに来ます。

Re: お久し振りです(笑)

二階堂 新さま

こんばんは。
ご訪問&コメントをありがとうございます。
ブログ、改変無事に終了されたのですね(笑)。
リンクまでいただき重ねて御礼申し上げます。

美学科に進まれた方に恐れ多いお言葉をいただき、恐縮しております(笑)。
私も趣味でデッサンなどはしていましたが、無能を自覚しいまや観る方中心です(汗)。

こちらも後ほどリンクさせていただきます。
どうぞこれからもよろしくお願いします。
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