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生活の中の芸術―陶芸家濱田のもうひとつの貌 ―『濱田庄司スタイル展』―

『濱田庄司スタイル展』 (汐留ミュージアム)


Hamada_Shojiチラシ
 柳宗悦や河井寛次郎らとともに、民藝運動の中心的なメンバーだった濱田庄司を新しい視点から見なおした展覧会。

 「陶芸の人間国宝は、モダニストでした。」

 端的なキャッチに見られるように、日本陶芸の重鎮濱田の作品としてではなく、“生活に根ざした”彼の創作の源流に光を当て、その先進性を照射する新しい切り口。なんとなく作家を近しいものとして感じられる空間になっている。
 それは、土の持つ、手の技の素朴さの持つ温かさに加えて、人間濱田の温かさを作品に加え、ほのぼのとした空気を放っているからか。

 バーナード・リーチと共にイギリスに渡り、そこで彼の地の、生活に根ざした、シンプルで“使う”という機能に優れた作品に触発され、益子と沖縄の土と造形に自身の目指す工芸の道を見つけた彼の軌跡を、彼が収集し愛用した作品と自作、そしてそれらが活かされた生活空間から観ていける構成。

 1.濱田庄司とイギリス
 2.浜田庄司のモダニスム
 3.濱田家の食卓

Hamada_Shoji_1 第1章、若い時から優秀だったらしい濱田が、イギリスでスリップウェアの手法を習得し、おおらかで繊細なフォルムと文様を持つ作品を造っていた様子が、現地で個展を開くなどの精力的な活動をしていたことを思わせるパンフレットなどの資料と共に閲覧できる。
 渋い色味にスリップの文様と釉薬の組み合わせが、早くも濱田の作品の特徴を確立している。

 自作の創造と共に、各地の陶芸作品も収集していたようで、それは滞在地イギリスにとどまらず、アメリカインディアンの編んだ草籠やポルトガルの鉢、スウェーデンの水注などのコレクション観られる。

Hamada_Shoji_2 そうした収集品とともに、2章では、彼が手掛けた家具や、イームスから贈られ愛用していたラウンジチェア、そしてイギリス帰りらしい、スーツ(三越製!)や帽子、ネクタイといった、さりげないながらもこだわりのある品々が並び、おしゃれ人濱田のモダンさを感じられる展示内容。
 和と洋が、対立なく違和感なくしっくりと収まっている空間を想像させるこれらの生活用具たちは、国も様式も異なれど、「生活する」というその根本的な一点において共有する様式美で結ばれていること、その視点で彼が収集し、使うことで味を付与していったことを実感させる。

Hamada_Shoji_3 そして面白かったのが、豪華な重箱に収められた帯留の数々。
 百貨店のお得意様向けに作成されたらしい陶器の帯留は、丸い形と文様がカタツムリのようで箱にチマチマと並んでいるたたずまいがなんとも可愛らしく、一つひとつを拾い上げて手で愛でたい宝箱だ。

 イギリスから、スリップウェアの技法と、田舎で生活と芸術活動とを自身でデザインするというスタイルから「良き生活」の大切さを学び、沖縄の伝統的な壺屋焼などの経験を経て、「健康な美」の追求のために、益子に生活の拠点を置き、死ぬまでその地での暮らしと制作を続けた濱田。

 第3章では、その彼の自宅に置かれ、使用されていた自作品、収集品が、食卓の再現と共に展示される。

Hamada_Shoji_4 ガラスケースに収まる皿には、子どものおやつやカレーライスが盛られたことが記され、(彼の生活にとってはあたり前ながら;笑)その贅沢な食空間に羨望すら感じさせ、壁に4段に陳列された湯飲みの数々は、まるで陶芸店で販売しているものを選んでいるような空間を演出している。ひっくり返っても買えないものばかりだけれど(笑)、「どれにしようかな」と選べる楽しさがある。

 美術館での展示品でありながら、これほどの親近感を感じさせる造りはとてもよく考えられているな、と。

 「民藝」というと、どことなくその伝統的な趣から、古くて素朴なものを思いがちであるが、それが生活に根ざした造形として、工芸として造られた時、いかにモダンなものであったのかを改めて感じさせる。
 生きることは食すこと、眠ること、家族と暮らすこと、その基本的な人間の活動を、いかに豊かに、温かく彩ることができるか、「モダニスム」も「民藝」もその活動理念はひとつだ。

 彼の作品はもちろん、名の通った陶芸作家の食器など、とても自宅で使用できる身分ではないけれど(笑)、濱田の思いは常にそこにあった。

Hamada_Shoji_5 実際に使われていた朴訥とした木製テーブルと、自作の傘によって装飾された電灯の元に再現された食卓風景に、ワイワイと家族や訪問者たちに囲まれて、食卓に並んだ滋味豊かな食器に盛られた“おやつ”や“夕飯”を楽しむ温かく賑やかな姿を幻視しつつ、「生活を彩る芸術」のひとつの大きな役割を改めて強く感じた。

 確かに近代は、芸術をいかに生活に結び付けようとしていたか、アーツ・アンド・クラフト運動しかり、バウハウスしかり、ウィーン工房しかり、その流れから見た時、日本に起こった「民藝運動」も、モダニスムとして位置付けられる。
 芸術と生活の幸せな融合、それはいずれも結果としてその素朴さや純粋さゆえに高級な生活様式としてしか実現しなかった皮肉を持ちながらも、アーティストたちがその理想として追求したムーヴメントだった。
 
Hamada_Shoji_6 現在の省エネ、エコを目指し、健康で豊かな生活を追求する「スローライフ」の先駆として位置付けて、人間国宝陶芸家濱田を“生きる”人間として見せていくこの企画は、彼の作品を観ていく上で、新たな視点と、改めて感得できる作品の魅力を引き出してくれるし、生活空間を想像する企業であるパナソニックが持つミュージアムでの企画としてもふさわしい。

 個人的にはやはり60年代以降の釉薬に独特の「流描」が施された作品が好みだが、まあ彼の目指した「良き生活」としてそれらの器を使いこなすには程遠い己の生活習慣&空間(苦笑)。

 渋みとほんのりとした温かさと同時に孕む緊張感ある造形と手触り(実際には触れないけれど)を、アーティストである前に人間としての濱田の姿と共に、より身近に鑑賞できたことで満足。
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テーマ : 絵画・美術
ジャンル : 学問・文化・芸術

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