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ブラック・コメディが反転させる「命」のメッセージ ―『ようこそ、自殺用品専門店へ』―

『ようこそ、自殺用品専門店へ』 ジャン トゥーレ  浜辺 貴絵 訳(ランダムハウスジャパン)


 フランスのコミック、バンド・デシネ(B・D)の作家でもあるという、トゥーレのブラック・コメディ小説。

 その不穏でどこかしらユーモラスなタイトル(原題は『Le Magasin des Suicides』(自殺ショップ))、大好きな『髪結いの亭主』の監督パトリス・ルコントがアニメにまでしたというストーリーに興味が沸いて。

 10代続く老舗の自殺用品の専門店を営むデュヴァッシュ家には、三人の子供がいる。
 常時頭痛に悩まされ、食べ物をみると吐いてしまう長男のフィンセント、怠惰で自分は醜いと思っている根暗の長女マリリン、そしていつも明るくニコニコとわらっている次男坊で末っ子のアラン。

 人々の死にたいという欲望にぴったりの商品を提供しているこの家族は、死に導くものを置く店にふさわしく、常に陰鬱な雰囲気で、笑顔なんてとんでもない、という接客で、首吊り用のロープから切腹の一式、飛び込み/飛び降り用のブロック、各種毒薬まで、幅広く扱い、信用(?)ある店としての伝統を守ってきた。

 ミシマとルークリース夫妻の子供たち、フィンセントとマリリンも、親の期待に応える根暗ぶり。なのに何を間違ったか、末っ子アランがベビーカーの中で笑った時から、この店と家族の営みに狂いが生じてきて…。

 世界は砂漠化した地球、無力な為政者、絶えない闘争…と、暗いニュースばかり。生きる気力をなくすのがあたり前の社会で、常に前向き(?)に、死を選ぶ人々に的確な商品を提供している「自殺用品専門店」。
 登場人物や通りの名前はすべて過去に自殺した人々にちなんでいる。(三島由紀夫、ゴッホ、モンローなどなど…)

 暗くて病的(であろうとする)家族の姿は、なんともユーモラスで、映画『アダムス・ファミリー』を彷彿とさせる。(この作品、大好き)

 闇の世界に生きなければならない人間(『アダムス…』の場合はお化けだけど)が、あくまでもその「雰囲気」を大切にして守っていこうとするところに生まれる可笑しさやまじめな滑稽さ、それは、暗いばかりでは生きていけない人間の根本的な生命力に由来する「希望」や「将来」を裏付ける。

 イライラしながらもアランの明るさに次第に引っ張られていくこんな家族たちのドタバタは、しかし、思いもかけないショッキングな終わり方をする。

 簡単には語れない重たい「自殺」というテーマを、コミカルにニヒリスティックに描いたブラック・ファンタジー。
 遊び心、いたずら心満載で、それでいながらとても哀しい笑いを残すあたり、『髪結いの亭主』のラストに重なり、なぜルコント監督がお気に召したのが、非常に分かる展開だ。

 世界的に不穏な空気に包まれつつあるいま、生きることに疑問や諦めを持つ風潮も高まっている中で、「死」を見つめるこの作品の、反転に次ぐ反転が生みだす(実は)奥深い「生」のかけらは、アランという天使が贈る、哀しみを核にした温かい「命」そのものとして突き刺さってくる。

 来年公開予定のアニメ映画、かなり楽しみだ。


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テーマ : 読書記録
ジャンル : 小説・文学

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