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“野球ビジネス”の醍醐味を楽しむ ~『マネーボール』~

『マネーボール』 監督 ベネット・ミラー


Moneyballチラシ
 それほど野球が好きというわけでもましてや詳しくもないのだが、友人がチケットを入手してくれたし、ブラピが「この役を演れて光栄です」とどこかでいっていたし、なにより野球ときたらバリバリ“アメリカン”で疲れずに観られるだろう(笑)、と。

 自身もメジャーリーグ出身ながら途中からマネージメントに転身、それまでの経験と勘に基づいたスカウト制度を否定して、数値によるデータ野球によって低迷のアスレチックスを強豪チームへと導いた、実在するGMビリー・ビーンの逸話を映画化した作品とか。(実際に書籍化された『マネーボール』は読んでいない)

 選手経験を持つ、アスレチックスの若きGMビリー・ビーン(ブラッド・ピット)は、奥歯に衣着せぬ物言い、短気な性格(すぐに物を投げる、物に当たる…)、チームの試合球場にも足を運ばず、選手との交流も最低限にする癖の強いチーム・マネージャー。
 2001年のシーズンにはア・リーグの最終戦まで善戦するも最後に勝てず、主力だった人気選手も資本力にものを言わせるヤンキースやレッドソックスなどに引き抜かれ、チームは今やそうした巨大資本に支えられたナショナルチームのための選手養成所にまで堕す危機を迎えていた。オーナーはなかなか資金を出さない貧乏球団、当然人気選手を引き抜ける予算はなく、スカウトマンたちも退職後の寄り合いかと思うほど老人ばかりで、選手の体格や容姿、印象についての「おしゃべり」としか思えない万年変わらぬ報告にも辟易していた彼は、そもそもに「不公平なゲーム」に勝つための方策に行き詰まっていた。

 そんなとき、イエール大学で経済学を学び、野球経験はないものの、その統計理論で現在の野球運営を分析していたピーター・ブランド(ジョナ・ヒル)に出会い、後に「マネーボール」理論と言われることになる、低予算でチームを勝利に導く数字による選手の選定とマネジメントの方法を選択する。

 しかし従来の球界の常識を覆すその理論は、スカウトマン達はもちろん、チームの監督の反感を買い、2002年のチーム状況は悪化、連敗を重ねて、マスコミからも叩かれる結果を招く。
 それでも「マネーボール」の利点を信じ、ピーターとふたりで、理論の弊害になるチーフスカウトマンや選手を非情に切り捨て、監督の権限を侵犯し、選手との対話(個別コーチ)を重ねていくうちに、チームは奇跡的な連勝を遂げていく…。

 伝統と常識を打ち破り、新たな野球理論を確立したビリーに、先見の明のあるナショナルチームのオーナーから前代未聞のオファーが提示される。
 彼はこの大きな舞台と名声を手にするチャンスをどう活かしたのか―――?

 「最後に勝たなければ過程がよくても何の意味もない」という強いスタンスを持ち、「塁にでなければ勝てない」、「打率や制球率よりも出塁率を」、「一人の高額選手を複数の選手で補完する」など、その独特の「データ野球」の論理で、他球団からは戦力外と判断された選手たちを集めて低予算で勝利を獲得していく過程は、資本主義社会において、絶対的な強者に対する対抗策としてのビジネス戦略の事例ともなり、彼の、相棒ピーターの、そして論理の新しさを評価する某ナショナルチームのオーナーのひと言ひと言が示唆に富む(なかなか“お勉強”になる;笑)。

 と同時に、トレード、レイオフといった容赦のない駆け引きは、アメリカ最大の娯楽でもあるこのスポーツの、ビジネスとしての側面を強く露呈し、通告された選手が複雑な思いや絶望を秘めながらも淡々と受け入れていく姿も含めて、選手を「モノ」として扱う非情さとドライさを、アメリカの徹底した合理主義をよくも悪くも見せつける。

 その是非はともかく、常識的には半端者ばかりを集めた弱小チームが奇跡の記録を打ち立てていくストーリーは、実際の映像を交えていることもあって臨場感に富み、まるでリアルタイムに試合を追っているようなドキドキする興奮を与えてくれて楽しい。
 すでに結果の分かっている歴史なのに、そしてそれほどに野球に思い入れもないのに、つい当時のファンたちと一緒にアスレチックスの記録達成と勝利を祈って、思わず手に力が入ってしまったくらいだ(笑)。
 野球好き、ましてや大リーグファンならば、その記録映像も歴代に残る奇跡の足跡の追憶もたまらないことだろう。
 
 また、あくまでもGMとして非情な判断を下していくビリーには、かつて将来を嘱望される選手であり、スカウトマンの言葉を信じて大リーグに入るも挫折した自身の苦い経験と、彼らの無責任な甘言に対する不信や憤りが存在している。さらには誰にも口にできない己のあるジンクスに対する怖れも。そのため、彼のドライさには簡単には批判できない切実さと説得力が付与される。

 そろそろよい年齢になり、体格にも“風格”がでてきたブラピは、先の『ツリー・オブ・ライフ』でも感じたが、(相変わらず;笑)短気で強引、そして心に/過去に傷を持つ、“アメリカン・スピリット”に満ち満ちた男(特にスポーツマン)の役が本当によく似合う…。

 今回なかなかに魅力的だったのは、超有名大学卒(で、どうしてここに…?と思わせる)でユニークな理論を持ちこんだ、相棒ピーター役のジョナ・ヒルだ。
 決してかっこいいとは言えないその肥満した体と、短く丸い指でキーボードを叩き、次々とデータを解析、ビリーの強引で冷酷なマネージメントに戸惑いながらも、常に寄り添ってアドバイスをしてパートナーシップと人としての信頼関係を深めていく天才を好演している。 
 その苦しそうな肥満ぶりすらキュートに見えてくるよい演技だ。

 また、ビリーが溺愛する、(別れた妻の元に暮らす)娘ケイシー役のキャスリン・モリスがめちゃくちゃかわいい!
 別居しているとはいえ父が大好きで、その心の傷みも、球団が不調な時の心理も、トラウマになっているジンクスも、最も理解して思いやるケイシーの表情や言葉にはホロリとさせられる。

 単純に成功へと集約しない展開も含めて、これもひとつのアメリカン・ドリームの形だ。
 強烈なデータ・マーケティングを生みだしたこの国の合理主義に基づいた理論による「運営」、そしてデータでは測りきれない人間が関わるからこそ時に信じられないような展開をみせる「奇跡」、相反するかに思われる要素を体現する野球という、闘いでありながらショーでもある、ビジネスの/スポーツの“醍醐味”をたっぷり感じさせてくれる。

 おまけ。
 ビリーがモニタで戦況を覗く画面には、現在大リーグで活躍している日本人選手がちらりと映る…。同じく国技に近いほどに野球が愛されている日本の鑑賞者への配慮か?(笑)
 そんな実際の映像の使い方も凝っていてまた楽しめる。

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