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二元論に集約されない人間の描写 ~『コンテイジョン』~

『コンテイジョン』 監督 スティーブン・ソダーバーグ

Contagionチラシ
 『セックスと嘘とビデオテープ』からお気に入りの監督ソダーバーグ、『チェ』の2本立て大作では、相変わらずのアンダーな画面と、突き放したような人物の描写で、その健在ぶりに改めて惚れ直していたので、さっそく。

 原因不明の疫病の世界的発生に遭った人々を描くパンデミック・パニック・ムービー、と認識していたが、まずはその俳優人の豪華さに圧倒される。

 ハリウッド・スターを多用する手法は、『オーシャンズ』シリーズでゴージャスなクライム・ムービーを楽しませてもくれた彼だが、今回は“ゴージャス”というよりは、(ある意味狙ったともいえる)深みと渋さという形で、著名人たちが活きている。

 ある日、接触感染でわずか数日で脳に異常をきたして死亡するというウィルス系の病気が発生する。発生源は香港と思われるが、国際都市でもある香港には他国からも多くの人間が来ており、アメリカ、ロンドン、パリ、東京と、ほぼ世界同時多発したそれは、あっという間に全世界を覆うパンデミックとなっていく。
 アメリカのCDCおよびチューリッヒの国際赤十字が、感染源の特定とワクチンの開発、そして感染拡大の阻止のために動くが、その職員たちも次々とウィルスに冒されていく。
 アメリカでは街を封鎖、その内部では薬や食料品をめぐって暴動と略奪が起き、中国ではワクチンの獲得のために赤十字の職員が誘拐される。

 顔に顔に手をやる、手すりにつかまる、扉のノブをつかむ、子供を抱き上げる、愛する人とキスをする、日常の何気ない動作のすべてに感染の危機があるほどに強力な、まったく未知のウィルス。
 果たしてその感染経路は遡れるのか、そしてワクチンは間に合うのか――。

 よくある世界中を巻き込んだ“大パニック”として描写されていないところがソダーバーグだ。
 もちろん、封鎖された街の略奪や、検問所の混乱、ウィルスに効くと言われる中国茶(?)の奪い合いといった追い詰められた人々の恐怖と身勝手さが生み出す暴力と破壊の風景は描かれる。
 しかし全体的にはとても静かに、そしてスピーディーにウィルスに冒されていく人類の危機が描き出されていて、恐怖をいや増しにする。

 モノトーンかと思えるくらいにアンダーな画面は、ウィルスの蔓延とそれぞれの立場でそれぞれの行動と決断をする人々を追いつつ、各地の防犯カメラの映像を断片として散りばめながら、感染経路が時間を遡る形で挿入される。この時の交差がみごとな映像構成となっている。

 アメリカにそのウィルスを持ちこんだとされる感染源としての女性にグウィネス・パルトロウ、これほどの女優を早々に死亡させ、彼女の魅力的な笑顔の映像が感染源へと遡っていくのは、なかなかに痛々しく、スリリングだ。
 また、著名なブロガ―として、政府の欺瞞を暴くことで支持を得ている(自称)ジャーナリストにジュード・ロウ、一見アメリカらしい正義感と報道の自由にのっとってこのウィルスに対する政府の情報隠蔽を糾弾しているように見える彼の言動が、無責任で自己陶酔的、そして彼自身の欺瞞と利己的な側面を持つ二面性と、ネットという無軌道な情報ツールの危険性をも警告するキャラクターの造りがよい。

 ウィルスを解明すべく危険を承知で現地へ赴き感染してしまうCDCの医師にケイト・ウィンスレット、スイス赤十字の医師で中国人に攫われるマリオン・コティヤール、愛する女性に事前に情報をもらしてしまうCDC所長にローレンス・フィッシュバーン、そして最初の感染者の夫でなぜか抗体を持ち、ワクチン開発のために役に立ちつつ、娘と共に閉ざされた街でサバイバルをすることになる男にマット・デイモン、ワクチンの開発に従事し、最初の抗体を自分の体に試した女医には、感染した父を救いたい一心があった人物にジェニファー・イーリー、錚々たる俳優陣で描き出すのは、人類を救うために尽力する人間の善なる部分と、自らの欲望(それは命であり、愛する人の無事であり、名誉であり金である)とエゴであり、感染を恐れてストを起こす病院職員、薬を購入する列を乱して薬局を混乱に陥れる人々、配給の食料品を略奪する人々、ワクチンの接種権利を有利にしようとして医者を誘拐する中国人(ここには世界的な人種差別の意識も示唆される)、やがて食糧や薬のために強盗殺人にまで発展する、狂気と人間性を失っていく姿とともに、どちらも否定できないものとして等価に浮かび上がらせていくところはみごとだ。

 ワクチンが見つかり、その摂取方法に、籤による誕生日の抽選が長々と行われる国会(?)の中継は、一方で政府要人に先に与えられる事実と、ダミーのワクチンで誘拐された女医を救う赤十字の組織のやり口とそれを知った女医の決断と合わせて、切実ながらどこか滑稽めいた皮肉と痛みをもって迫ってくる。

 ワクチンの接種日程も決まり、ようやく混乱もおさまりつつある中、マット・デイモンの娘とそのボーイフレンドが自宅でたどたとしくダンスするシーンで終わるパニックの終結は、厳しい人間の性を突きつけられた後だけに完全解決ではない不安を伴いながらもホッとさせる。
 その気持ちも束の間、最後のショットで明かされる病原菌の発生源はアジア。このあたりは、相変わらず西洋の視点だなあと思いつつも、その原因となる自然破壊の元がアメリカ企業であることが示唆される。

 このバランス感覚、そして善悪二元論に還元されきれない人間の姿を突き放して描き出す手法、淡々と映し出される画面と構成、声高に叫ぶパニック・ムービーでは感じ切れない、痛みと恐怖と哀しみをジワジワと感じさせる秀作。

 やっぱりソダーバーグ、好きだな。


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