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20世紀最大の魔術師の真理?ペテン? ―『ムーンチャイルド』―

『ムーンチャイルド』 アレイスター クロウリー  江口 之隆 訳(創元推理文庫)

 
 新年早々に妖しげな作品からスタートだが(汗)、昨年のやり残し…。
 稀代の魔術師、そしてマスコミから“大悪党”と呼ばれたクロウリーの絶版書籍が復刻した。

 オジー・オズボーン、デイヴィッド・ボウイ、ビートルズ…いろいろなアーティストたちを魅了し、モームの『魔術師』のモデルにもされ、いまも多くの作品に使われるクロウリー。最近ではコミック『D-Gray man』でその名を見たか。

 彼が実際に関わった人々の肖像を多く含めたオカルト小説、その魅力が知りたくなって。

 若き天才魔術師のシリル・グレイ(クロウリー)は、ラヴィニア・キング(イザベル・ダンカンらしい)の付き人をしていたリーザを恋人とし、彼女を自身の秘密結社「白き友愛団」に加えて、「ムーンチャイルド」創造の大実験に取り組む。
 彼にことごとく揶揄され、面目を失っていた黒魔術の結社「ブラック・ロッジ」の幹部であるダグラスは、彼の計画を阻止し、復讐を果たすべく、あらゆる禁断の魔術を用いて攻撃を仕掛ける。
 イタリアの温暖な地方の城に魔法陣「捕蝶網」を張りこの攻撃に対抗しつつ、リーザを月の女神として完璧な準備を進めるシリルには、東洋の魔術「道(タオ)」を極めた賢者サイモン・イフが師匠として助力してくれていた。

 リーザに横恋慕するトルコ秘密情報部のアブドゥル・ベイも巻き込んでの「ブラック・ロッジ」の妨害、シリルに恋しながらも、世俗的な女の感情を捨て切れず、置かれている環境に満足できなくなっていくリーザの心の揺れ、常に肝心な話を軽口と引用で煙に巻く皮肉屋のシリルの性格、そしてヨーロッパは植民地戦争を発端に、第一次大戦へきな臭い情報戦が繰り広げられる中、「ムーンチャイルド」の創造は果たせるのか―――?

 唐突なシリルとリーザの恋愛、そこから彼女の結社への入団儀式、敵の手を逃れての「ムーンチャイルド」創造への熱意と計画の仕込み、さらなる追手たちの手を変え品を変えての妨害と防御、そこまでは、やや敵陣「ブラック・ロッジ」の間抜けぶりに比べ、自身の陣営の優越性を強く出しすぎの感はありながら、神秘性と不穏さを孕んで、惹きつけられる。

 しかし、どうもリーザの疑惑と不満の高揚と逃亡あたりから、いきなり戦争色に塗り替えられ、シリルの活躍が軍隊における情報戦でのそれにシフトして、話が散漫になっていく…。白と黒の闘いもなんだか空中分解してしまう。

 あれほどの人材と周到な結界で進めていた「ムーンチャイルド」の創造はどこへいったんだ…?

 次々と魔術理論を発表し、あちこちで胡散臭い術と、その天才的な頭脳と語りによって話題をさらってきたクローリーらしいといえばらしいのだが、バタバタとたたまれていく両者の人間の結末は、なんとも煙に巻かれた読後感が残る。

 ひとつにはオカルティズムの知識に私が乏しいことが要因していると思うが、どうも魔術師の論理に基づいた最大級の禁忌、人造人間の物語として構想されたものの、彼(クローリー)が実際に対立した人々の誹謗中傷に振り回されて、途中で変説(あるいは挫折)、戦争ものにお茶を濁したのではないか、ともとれそうな未消化さが…。

 もっともオカルトへの信心がもっと深い人間だったら、各所に散りばめられた示唆にも深く反応できるのかもれない。

 それでも最後はみごとな哲学を披露してくれる。

 敵対するダグラスの死にざまを見たシリルが到達した真理、「生きとし生けるものすべて、自己と同一であるという悟り」――今日のダグラスは明日の自身であいるという覚醒、その諦念にも似た絶望から生まれた確信から再び魔力を獲得しようするシリルと、結局彼の言動を高みから見ながら、自らの目的は果たしたサイモン・イフのしたたかさとが対比された時、魔術はまた新しい時代の、新しい世界を創造する可能性を示唆して締めくくられる。

 これはなかなかにかっこいい。

 うーん…。
 当時のイギリスのオカルティスムの隆盛や雰囲気を(その胡散臭さとともに;笑)味わえることとこのラストで、なんとか話のハチャメチャさは見逃せる…の…かな……?
 
 物語そのものが“魔術”といえるのかもしれない。
 でもやっぱり「ムーンチャイルド」の行方は知りたかったぞ…。 



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ジャンル : 小説・文学

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