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ちょっとブレイク・13古書が明かす過去の微温と痛み ―『ビブリア古書堂の事件手帖1・2』―

『ビブリア古書堂の事件手帖―栞子さんと奇妙な客人たち 』
『ビブリア古書堂の事件手帖 2 栞子さんと謎めく日常』 三上 延 (アスキーメディアワークス)



 出どこがすでにライトノベル系だったためしばらく迷っていたのだが、どうやら老若男女(特に年配の方)に受けているようで、かつシリーズ2冊目に使われている書籍に『時計仕掛けのオレンジ』があったりで、帰りに読む本がなくなったのを機会に。いきなりのブレイクタイムだけれど。

 鎌倉のはずれ、エアスポットのような静かな一画にひっそりとある古書店。文芸・アート関連を扱う書店としては、知る人ぞ知る老舗「ビブリア古書堂」の店主は、その佇まいとはかけ離れた若く美しい女性。
 いわゆる“本の虫”であるこの篠川栞子は、普段は店を訪れる客にすらまともに声もかけられないほどの人見知りながら、こと書籍のこととなると、その驚くべき情報と洞察力を発揮し、きびきびと語り始め、謎を解き明かしていく変わり者だ。

 このいわば“アームチェア・ディテクティブ”としての栞子さんと、厳しくも可愛がってくれた祖母の死をきっかけに彼女が大切にしていた書籍を処分しようとして、ふと思い出した「ビブリア古書堂」を訪れた五浦大輔との出会いが、日々持ちこまれる書籍にまつわるさまざまな人間模様や謎や秘密を解き明かしていくことになる。

 この五浦大輔、本に描かれていることは嫌いではないながら、“体質として”読めないという心理的トラウマを持つ。高校時代に通学の途中でこの古書店と彼女を見かけ、その意外性とともになんとなく淡い憧れを記憶していたのだった。
 やがて大学を卒業した彼は、不景気な世の中で就職もままならず、焦りを持ちながらも就職浪人として日々を送っていたのが、栞子と知り合って「ビブリア古書堂」に勤めることになる。

 彼の目を通して描かれる栞子との関係と、それぞれの書籍にまつわるエピソードが解き明かされていく、ほのぼの恋愛と日常ミステリの連作シリーズ。

  一巻め
   第一話:夏目漱石『漱石全集・新書版』(岩波書店)
   第二話:小山清『落穂拾ひ・聖アンデルセン』(新潮文庫)
   第三話:ヴィノグラードフ・クジミン『論理学入門』(青木文庫)
   第四話:太宰治『晩年』(砂子屋書房)

  二巻め
    プロローグ:坂口三千代『クラクラ日記』(文芸春秋)・Ⅰ
   第一話:アントニィ・バージェス『時計仕掛けのオレンジ』(ハヤカワNV文庫)
   第二話:福田定一『名言随筆 サラリーマン』(六月社)
   第三話:足塚不二雄『UTOPIA 最後の世界大戦』(鶴書房)
    エピローグ:坂口三千代『クラクラ日記』(文芸春秋)・Ⅱ
 
 章ごとに一冊の実在の書籍の来歴が披露される。それは、蔵書印と献辞にまつわる秘密だったり、初版の文庫への想いだったり、アンカット版の稀覯本だったり、普及したアメリカ版と後年に出された完全版との違いだったり、著名な作家の初期の異ジャンル本だったり、幻のコミックだったり、それだけで古書だからこそ持つ魅力と楽しさ、ちょっとしたうんちくだ。

 作品の選択も文芸専門の店舗という設定ながら、人文書やSF、ビジネスエッセイからコミックまで、ジャンルを限っていないところが面白い。(第一話が漱石から始まるあたりは常套だな、と思いつつ;笑)

 そこに、その持ち主である人々の過去と隠された秘密が、ときに重たく、ときに切なく、あるいは温かく、痛々しく暴かれ、古書から結ばれていく人間関係が重なっていく。
 ホームレスの“せどり”志田、大輔の高校の後輩である菜緒とその妹、大輔の元彼女である晶穂、そして同業者であり、いわゆる古書狂の大庭など、淡い形ながら「ビブリア古書堂」に関わる人々が増えながら、栞子の過去とその傷がだんだんと明らかになりつつある。

 各章のミステリ自体はいずれも途中で読めてしまうレベルだし、栞子さんのキャラ設定と大輔との関係は非常にラノベ的な“パターン”に思えるが、大輔のちょっと引いたというか、醒めた観察眼がここちよい。栞子さんに憧れながら、彼女の洞察力や知識の結果が人を望むように動かしてしまう可能性を持つという、ある意味でずるい人間性をも露わにしているのが魅力だ。

 都会とはやや時間の流れ方の異なる鎌倉という空間で、毎朝看板を出して、棚の並べ替えをし、持ちこまれた書籍を査定して価格をつけ、ネットからの注文に対応し、訪問鑑定依頼があれば出張する、鑑定眼と経験値、知識が必須で、そこに楽しみを見出す古書店の日常がさりげなく描かれているのも、本の来歴に関わりなく、表紙がきれいで新しければ一定価格をつける、アルバイトでも可能な買い取りをシステム化した某大手古書店が席巻しているいま、(その査定を逆手に利用することがありながらも)どこかホッと和ませる。

 気軽に読めて、改めて蔵書に愛おしさを感じられるシリーズ、これからどんな本のエピソードが開陳されるのか、古書店好きとしてはしばらく追ってみたい。





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テーマ : 読書記録
ジャンル : 小説・文学

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armchair detectiveね。

Re: タイトルなし

名無しさま

ご訪問&ご指摘、ありがとうございました。
“チェア”、抜けていましたね…(汗)
お恥ずかしいことで。さっそく修正しました。。。

3巻まで一気読みしました

ご無沙汰いたしておりました。
まだまだ暑い日が続いていますが お変わりありませんか?

ビブリア古書堂の栞子さん、、、キャラクターがいいですね。
変にベタベタしてない大輔クンにも好感がもてます。
ネタバレになるので、詳しくは書けませんが3巻での古書で読んでみたいナァと思わせる本が一冊ありました。
でも、もう絶版になってるそうで、コレクターから出品されてるお値段が目が飛び出るほど高価で
ビックリしてしまいました。
ビブリア古書堂ではどの位の値段をつけるんだろうと、オバサン目線で興味津々・・・

古書を巡る人々のつながりが面白いと思いました。
近くにこのようなお店があったら、絶対覗いてみたいと・・・
こんな風な謎解きもアリなんだナと、改めて作者の目の付け所にうなった次第です。
第3巻も是非!

Re: 3巻まで一気読みしました

あんごま きなこ さま

ご無沙汰しております。。
すっかり暑さにかまけて更新もせずに8月を過ごしてしまいました(汗)。
変わらぬご訪問をありがとうございます!
あんごま きなこさんご健在で、嬉しい便りでした。

実は3巻、私も既読なのですが、そばに積み上げたまま…。
未読のみならず、既読まで山になっています…(反省)。

そうなんです。大輔がわりとクールなのがよいですよね。
栞子の謎もちょっぴり進んだし。

そしてあんごま きなこさんが読みたい本って、集英社の「あれ」、ですよね!
確かに桁違いの価格がつけられているみたいですね…。
本って怖い…(笑)。

3巻はややもたついた感を思わなくもなかったのですが、
知らない作品や新たな古書の来歴(言語矛盾?)のトリビア的な楽しみは
魅力です。

実はこれにからんで、「ネタ本」(というと失礼か、影響を受けた本?)の
方にも手を出しています。
内容的にはそちらの方が古書“狂”の重み全開で、インパクトが。

ちょっとなまけ癖を矯正して、この3巻の読書感とともに
そのうちアップします!

はなはだ気まぐれ、アバウトな更新ですが、
またお暇なときにでもお読み捨ていただけましたら。

本当に嬉しいコメントで、夏バテにパワーをいただきました。
ありがとうございます~。
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