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一気公開。幕末の奇才浮世絵師の粋と剛毅 ―『歌川国芳展』

『没後150年 歌川国芳展』 (森アーツセンターギャラリー)


Kuniyoshiチラシ_1
 また油断して終了後のレポートに…。
 
 没後150年の大きな回顧展、展示される作品数の多さでも過去最大とは聞いていたが、想像以上に混んでいてびっくり。
 初公開、新発見も含めているということで、わざわざ前期に行ったのだが、最も観たかった≪きん魚づくし ぼんぼん≫は、後期というのを会場で知ってちょっとショック…(泣)。まあ事前にろくすっぽ調べもせずに行った己の迂闊さでしかないのだが。
 前期・後期でほとんど作品が入れ替わるという豪華な点数。残念ながら2回目は叶わなかった…。

 豊国の門下として始めた浮世絵の世界。最初はあまりパッとしなかったようだが、壮年になってからの「物語絵」でブレイク、その後は人気の役者絵のほかに、動物や人体を使った戯画や、当時の風俗画などでも、その大胆な構図や、江戸人が好みそうな洒脱とユーモアで多くの作品を残している。
 江戸末期、やがて衰退していく浮世絵の、最後の輝きのひとつといえる。

 猫好きでも知られた彼の≪其のまま地口 猫飼好五十三疋≫(これまた後期…;泣)は、東海道の宿場の語呂合わせを猫の姿態になぞらえて、いつまででも眺めていられる判じ絵。愛らしく洒落ていて、見るたびになんだかそれだけで“ぱぁーっ”と嬉しくなる。
 ≪宮本武蔵の鯨退治≫は、初めて目にした時に、あまりにも勇壮でそれでいてどこか愛嬌のある鯨に魅せられて、うっかり主人公の武蔵を探し忘れるところだった(笑)。
 ≪荷宝蔵壁のむだ書≫では、やはり当時でも落書きがあったのだなという楽しさと、敢えて“ヘタ”に描いた彼の力量、そして役者の判じ絵となっているそのアイデアにわくわくしたものだ。

 それらお気に入りを含めて堂々の大展覧会、混みあう中ちょろちょろと合間を縫って“江戸っ子”国芳の気概に触れてきた。

 それぞれの画の内容に合わせた10章立て。
 刷りの状態もよいものが多く、鮮やかな劇画から軽やかな遊び絵まで、各ジャンルで彼がどんな創意と工夫を凝らしていたのかを観られる構成といえる。
 気になったのが、今回の出品先が一切表示されていないこと。個人の所有は仕方がないとしても、カタログにすら所蔵先が一切掲載されておらず、これほどの大きな展覧会としてはなんとなく不自然で奇妙な印象を持った。いったいどこから集めてきた…?

 第1章 武者絵―みなぎる力と躍動感
 やはり国芳といえば、この迫力の世界。得意とした大判3枚摺りのものはもちろんのこと、巨大な動物に、怪異に、敵に向かっていく逞しく精悍な武者が、活き活きと、かつ大胆な構図の中で活躍する。
 時代を経てなお一場面でこの躍動感と画面から発するエネルギーに押されるのだから、当時それぞれの歴史物語が流行していた時に人々へ与えた衝撃とときめきはさぞかし大きかったことだろうと。
Kuniyoshi_1
 改めて観たかった≪宮本武蔵の鯨退治≫。どうしても画面いっぱいにその身をうねらせる鯨にくぎ付け。波の飛沫をも思わせるような皮膚の白点のリズムがさらにその激しい動きを感じさせる。逆巻く波と鯨の動きによって起こる波濤の音が聞こえてきそうだ。

 これまた有名な≪相馬の古内裏≫の破れた御簾を押しつぶして現れる大骸骨も、いつ観ても圧巻。
Kuniyoshi_2 ≪清盛入道布引滝遊覧悪源太義平霊討難波次郎≫の稲妻の激しい表現、≪坂田怪童丸≫や武者絵シリーズの≪美家本武蔵≫、≪和田平太胤長≫の怪異や化け物と闘う迫力の構図、水滸伝の≪本朝水滸伝豪傑八百人一個 早川鮎之助≫のみごとな刺青の美などなど、まさに劇画。

Kuniyoshi_3 鮮やかな色彩と大きく歪められた肉体、その体に巻きつくような奇っ怪な化け物や巨大動物、とどろく雷鳴や波濤、息遣いや音まで聞こえてきそうな造り込んだ画面がこれでもか、というほどに並んでいる。
 そしてどこかユーモラスな軽やかさを含んで私たちを魅了する。

 個人的にはやはり怪物たちの造形が独創的で楽しく、タイトルもそこそこに“化け物探し”にいそしんでいた(笑)。
  
 第2章 説話―物語とイメージ
 1章に続いて、江戸の人々に親しまれていた説話の世界を描いた作品のインターバル。
 ≪周易八卦絵 巽風≫、≪周易八卦絵 震雷≫は、国芳の数人雷神図だ。それぞれ眷属を連れ、青と曲線の風神、肌色と直線の雷神の対比は、彼の表現の広さを感じさせてくれる。
 嬉しくなるくらい楽しげなのが≪龍宮玉取姫之図≫。自らの乳房に龍宮の玉を隠して持ちかえろうとした姫を追う、海の生き物たちのなんと自由闊達でユニークなことか。できれば後期の予定である≪龍宮城 田原藤太秀郷に三種の土産を贈≫の方と並べて観たかった。

 第3章 役者絵―人気役者のさまざまな姿
 武者絵をみてしまうと、どうしても役者絵の方は、人物の表情などが一定で、ブロマイド的役割としては勢いを失うかな、と。だたその一方で、国芳らしさといえるそれぞれの舞台の情景を取り込み、物語自身を雄弁に表現する“舞台絵”となっているものがやはりよいか。

Kuniyoshi_4
 ≪三代目尾上菊五郎の彦惣・五代目瀬川菊之丞の小金≫よりも、≪三代目中村歌右衛門の鬼一・三代目尾上梅幸の牛若≫や≪坂東しうかの唐土姫・三代目尾上菊五郎之天竺冠者・五代目沢村宗十郎の斯波右衛門≫などの、緊迫したシーンとしての作品で、誰が描かれているかよりも、どんな“物語”かを思わせる作品に惹かれる。

Kuniyoshi_5 団扇に描かれたそれらも、他の浮世絵師のブロマイド的な肖像とはやや趣が異なり、限られた空間にいかに対峙する人物の緊張した空気を盛り込むかに国芳の工夫と創意とをより感じられる。
 
 第4章 美人画―江戸の粋と団扇絵の美
 国芳の美人画は、きりりとしたちゃきちゃきの江戸娘(女)の印象、わりと日常の中に動く姿をとどめたものたちが多くて、情景としての楽しさがあるのだが、その分並べてしまうとその顔がみんな同じであることに気づかされてしまう…。
 やはりここでも、その人物の美しさというよりは、そうした情景の中で光る女たちの美が表現されている。

 ≪雪月花 月≫≪雪月花 雪≫(できれば≪花≫も欲しかった…)。
 月明かりに文を書こうとしているのか、胸元に巻紙を持つ女性、こたつから雪の景色を見る女性(そばに枕があるのが微笑ましい;笑)は、家でくつろいでいるときのふとした表情が魅力的だ。
 「狂歌賛美人半身シリーズ」の≪遊女≫≪囲い女≫≪軽子≫の3点は、当時の職業(?)による女性の装いの違いを見せてくれる。

Kuniyoshi_6 「美人子ども十二ヵ月シリーズ」では≪端月の初卯≫が印象的だ。子どもを抱え上げる母親の「よいしょっ」という声が聞こえそうな、重さを感じさせるところがよい。
 「四季心女遊」は、≪春≫と≪夏≫が。(これも≪秋≫≪冬≫、観たかったな…)
 3枚組の中に、四季折々の行事を楽しむ女性と子どもを活き活きと描いていて、その大らかな空気にこちらまで心躍る。春のややひんやりとしたものを残しながらも、温かさを感じさせる葦取りの情景、夏の宵の少し涼しくなった川辺で花火を見ながら風に吹かれる女たち、国芳ならではの臨場感がよい。

Kuniyoshi_7 団扇絵では、「鏡面シリーズ」から、国芳お得意の猫と戯れる≪猫と遊ぶ娘≫と、化粧をする≪紅付け≫に、「浮夜八会」から≪中の町≫に出逢えた。
 娘に遊ばれる猫の表情が(ちょっと嫌そうで;笑)リアルで愛らしく、桜の簪をつけ、手拭いでほんのりした紅を付ける若い娘の楽しげな表情、桜散る春の夜を楽しむ女性のそばには「程よしや」の行燈がほんのりと灯り、まるでこの美人の心を表しているようで、いずれも“見惚れる”というよりは、頬が緩む、楽しい美女たちだ。

 構図と背景に工夫を凝らす国芳の作品は、団扇でその魅力を発揮する。ここに展示されている多くの団扇絵が当時の彼の人気ぶりと、センスを感じさせてくれる。
 ≪名酒揃 宮戸川≫など、背景は大胆な格子柄。モダンな感覚に唸る。

 ≪暑中の夕立≫は、急に降りだした夏の豪雨の音が再現されるような縦の強い線の中に、裾をからげて傘をさす3美人が、どことなく楽しそうで、この雨に濡れることを諦めたような、さばさばとした感じが心地よい(あるある、と思ってしまう)。地面をたたく水が、まるでマンガのような「✓」マークで描かれているのもお茶目。

 秀逸は≪雪だるまを作る美人≫。
 高下駄を履き、傘を差して雪だるまを作る女性を細長い画面に表した一作。画面左下に半分だけ描かれた雪だるまが、下へいくにつれて薄墨でグラデーションが施されている。この濃淡が、地面に近いところの雪が泥に濁っていることを感じさせ、雪だるまにリアルな質感を与え、上部の白が引き立って冷たさを表現している。
 青い地に白い桔梗をあしらった着物が降る雪を彷彿とさせながら、茶の濃淡が格子になったどてら(?)と傘の色と反復して、美しい調和を作る。
 大きく画面を割って、部分として描かれる傘と雪だるま。絶妙な構図と色彩配置にいつ観てもうっとり。

 ここもやはり“美人”を楽しむというよりは、女性の“姿態”と構図や設定を堪能するコーナーとなっている。(やはり女性の貌そのものは、みんなほとんど同じなんだもの…)

 さて、この後もうひとつの国芳らしさ満載の世界と、貴重な肉筆画が控えているし、すでに展覧会も終了しているのだけれど、いったんここで(汗)。
 続きは後日…。
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