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小粒ながら、本格「館」ミステリの骨格回帰 ―『奇面館の殺人』―

『奇面館の殺人』 綾辻 行人 (講談社ノベルス)


 待ちわびた館シリーズ。何年ぶりだろうか。

 楽しみに早速購入したものの、ふと気になったのが前作『暗黒館の殺人』…。
 上下巻であることは認識、刊行当時の彼の作品がいまひとつの冴えだったのでそのうち…と思った記憶で止まっていたため、別途古書で入手、先にこちらを読んでから、と。

 読み始めは問題なく、しかし途中双子が登場するあたりから微妙に情景が先読みできて「あれ……?」と。
 下巻からはほぼ既読作品だった(ろう)ことを確信しつつも、その時点ですら結末は全く思い出せず、結局最後まで時間を費やしてしまう…。

 山奥にある湖に建てられた暗黒館で起きる連続殺人事件。この館に関わった建築家 中村青司を追って訪れた編集者の江南は、その地でアクシデントに遭い、一時的に記憶を失ってしまう。その記憶の曖昧さと、時を超えた過去の事件との相似形が生みだす、暗黒館の一族を覆う秘密の儀式とそこに隠された悲劇が描かれてはいるものの、あまりの偶然性の強さと、幻想性、記述トリックに偏り過ぎたた結果、それまでに持っていた「館ミステリー」のトリックの面白さを失っている…。

 なによりも、くどい。
 思わせぶりな第3の視点での描写の不自然さに加え、あまりに冗長で繰り返しも多く、事件の推理よりも読み進めることに努力を要するいまいち作だ。(もう少しシンプルに短くしてもよかったのでは…と)

 そして半分イライラしながらも最後まで読み終わりれば、ああ“思い出した”……。書棚の奥を探れば、やはり…。初版・帯付きの美本のまま収まっている上下本を見て、思いっきり落ち込むことに。(購入する前に見ろよ!)
 どうしてミステリって結末を忘れてしまうのだろう…。おまけに1/3読んでも記憶が戻らない己を罵り、不活性な脳みそを嘆き、時間とお金(古書価格だけれど)の無駄遣いを悔やみ、せめて登場人物の面影がよみがえったことを慰めとしながら新作へ(だから反省が活きないんだが;苦)。

 まるで不幸を呼び込むかのような謎の建築家中村青司に魅せられた江南が次々と遭遇する陰惨な殺人事件のシリーズ、前作では登場しなかった探偵役としての小説家 鹿谷門実が遭遇する山間の館で起こる殺人事件。

 世界各地の仮面を収集して館に飾ったことで「奇面館」と呼ばれる都心郊外山間の別荘。ここも改築を中村青司が手掛けていたという。
 この館の当主影山逸史により毎年ある条件の人間たちが集められる。一晩の晩餐と主人との対談を行うだけで高額の謝礼を約束されたその会合に、鹿谷は、初めて招待されたとある作家の身代わりとして参加することになる。

 滞在中は館にある奇妙な鍵付きの仮面で全員が顔を隠さなくてはならない。7つの大罪をテーマにしたその仮面によって、それぞれの容姿も分からないまま集まった6人の男たち。
 季節外れの大雪で帰途が閉ざされ孤立したこの奇面館で、館の主人が無残な姿で殺害される。

 館に秘められた謎と仮面との関係、そして殺人者は誰なのか、なぜ凄惨な死体にしなければならなかったのか――? 
 この会合のために雇われたメイド、執事、管理人兼料理人を加え、9人の人間が互いに疑心暗鬼に陥る中、鹿谷の華麗な推理が展開される。

 久しぶりに幻想的な色合いを抑えめにした「本格推理」ものとして、すっきりとまとまっていると言えるか。
 館のトリック、死体の状態からの殺人の動機や犯人の行動の推理、それらを得意の記述トリックに絡ませて、ある意味傲慢とも感じられる鹿谷の名探偵ぶりも復活、小粒ながら懐かしの「綾辻 館ワールド」へと回帰しているのが嬉しかった。
 
 殺人にまで発展した事件の背景にある犯人の意図や、館に6人の人間を集めた主人の想いはやや説得力に欠ける感もないではないし、そして中村青司が関わった経歴を持つ建築にまつわる、館の持ち主とその一族にただよう狂気のような陰惨さも、これまでのシリーズに比べると弱い印象だが、手軽に読め、かつかっちりとした本格ミステリの体裁を楽しめる。

 欲を言えば、個人的にはもう少し「仮面」の持つ不気味さが活きる背景の深みがあったらよかったかな、と。(「奇面館」なんだし…)

 古代から言われる「仮面」の持つ魔術性、その活用の歴史、正/邪の二面性、人間心理との関わり、もちろんそこに触れての主人影山逸史の歪んだ希望が設定されているのだが、そうした仮面をモチーフにした館に引きこもった彼の狂気との絡みが、(空気の描写の巧みな作家なのに)思ったよりもあっさりしていたかな、と。

 このシリーズもいよいよクライマックスへと入りつつあるはず。(思えば長いよなー)
 鹿谷氏も相変わらずの切れ味を発揮しているし、このままのテイストで、中村青司の闇が蘇り、江南クンも再登場して、初期のインパクトを再現してくれたら、と次作への期待が高まる小休止の一作。




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ジャンル : 小説・文学

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