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“伝承”を紐解く“あわいの科学”なんだけど… ―『バチカン奇跡調査官:続』―

『バチカン奇跡調査官 千年王国のしらべ』
『バチカン奇跡調査官 血と薔薇と十字架』 藤木 稟 (角川ホラー文庫)



 美青年ふたりのキャラクター設定、ライトなミステリと、条件が揃ってきたな、と思っていたらやはりコミック化された藤木氏の『バチカン奇跡調査官』シリーズ。
 前3作でもういいかな…とも思っていたのだが、古書店で見つけてつい手を出してしまった…。

 バルカン半島の小国ルノア共和国に、水の上を歩き、人々を癒し、死後3日目に蘇ったという、まさにキリストの再来を思わせる奇跡を起こした司際が現われた。この奇跡を査定すべく、若いながらも天才的な調査官の平賀とロベルトは、厳粛なイエズス会の教会に滞在することになる。訪問したその日に川を渡るアントニウスに出迎えられ、どんなに調べても、眉間を撃たれたアントニウス司際の狙撃事件にも、彼が起こした数々の現象にも疑わしい要素が出てこない…。そんな矢先、平賀は悪魔崇拝のテロ組織に拉致され、毒ガスに汚染されて心肺が停止する。嘆き悲しむロベルトの前に現れたアントニウス司際。彼は本当の奇跡を起こすのか――?『千年王国の調べ』

 イギリスでのある調査の帰り、嵐と不思議な火の玉の出現により車が事故を起こし、閉鎖的な寒村に滞在せざるを得なくなった平賀とロベルト。そこでは村人が次々と吸血鬼に襲われるという事件が発生していた。村を囲む山に現れる青白い光、毎夜咆哮する狼の群れ、黒い霧や蝙蝠となって人々の家に侵入し生き血をすする黒髪に真っ赤な瞳、黒マントの怪人…。ある者はそのまま死に至り、ある者は数日後に息を吹き返す被害者たち。ファイロン公爵の領地として、古くから吸血鬼伝承とともに生きてきた住人は、怖れ、憤りながらも吸血鬼の存在を所与のものとして対応している。果たして不死者は本当に存在するのか、吸血鬼の伝説は事実だったのか――?『血と薔薇と十字架』

 2作品ともに、先の3作品とはやや趣を変え、“伝承”としての聖書、あるいは屍者の書といった、“書かれた/語られた”ものをテーマに、まずは否定困難な奇跡や怪異や現象を提示しつつ、そこに絡んでいる人間の欲望と思惑が生みだす「人為」を科学として解明していくミステリ仕立てとなっている。

 相変わらず、対人関係に不器用で純粋な平賀と、世知にも長けバランス感覚のあるロベルトとの役割を活かしたコンビは、その天才ぶりがちょっと超人的とはいえ(笑)、気持ちのよい活躍ぶりだ。ちょっとロベルトの方がスマートさを増し、平賀がやや間抜けぶりを強めているのが不安材料だけれど(共に対等な活躍ぶりがいいな、と;笑)

 また、キリスト教の持つ多くの宗派の対立と勢力争いの絡みや、ケルトをはじめとする古代宗教の存在と、キリスト教布教による融合や弾圧といった歴史的な経緯など、物語の背景の設定が実は厚く細やかなのは、藤木氏らしさを感じさせて嬉しくなる。
 『千年王国』と言われて、「ナチス絡みか…?」と思いきや、純然たる聖書の千年王国だったのにはやられた。

 ただそれだけに、超常現象を科学で解明していくその手際は、単なる解析に開いていくにとどまらず、人間心理も含めた微妙で繊細な“あわい”を持たせてみごとながら、今回もまた(ミステリとしての)謎ときにおける飛躍というか、ご都合主義というか、「それはルール違反でしょ…」という感が残る。「バチカン」というスーパー機関の使い方も…。

 殊に『千年王国のしらべ』の顛末には、(もちろんあり得なくはないけれど)そこに持っていったらあらゆる奇跡の認識も、不可能犯罪もOKだよね…という力技だ(汗)。

 その意味では『血と薔薇と十字架』の方が多少ミステリの仕掛けとしてはありかな、と(途中で分かってしまうが)。
 とはいえこちらはこちらで、作品にするにあたり調査されたであろう数々の「吸血鬼」伝承や小説作品、そして実犯罪に対するうんちくが未消化のままだらだらと提示されている印象が強く、いまひとつ物語としてしっくりと入っていけないところが気になった。
 そのせいか、他の登場人物たちの造形がぼんやりとしてしまい、同時にタイトルほどに「薔薇と十字架」のニュアンスが活かされきれていないところも(珍しくベタで長いタイトルだなと思ったことと合わせて)残念。

 いずれの作品にも、平賀の宿敵は今回登場せず、実は背後に存在を示唆するにとどまっている。ただしここでもまた世界規模の陰謀の予感を漂わせて。
 この宿敵の配置の仕方は、それぞれのエピソードが大きな陰謀とそれに対峙していく平賀とロベルトの行く末を感じさせ、そもそもに交錯したプロットが上手い作者だけに楽しみなところではある。
 けどまだまだ続くのね…。

 そういいながら、この世ならぬ現象をどう説明可能なものとしていくのか、あるいは不可能なものとして残していくのか、その中に人間の業をどう織り込んでいくのか、近頃ではその“すっとばし方”も含めて(笑)、結局追いかけていきそうだ…。


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ジャンル : 小説・文学

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