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ちょっとブレイク・17 役者を絞っての悲劇譚がなかなか ―『蛟堂報復録 Ⅲ』―

『蛟堂報復録 Ⅲ』 鈴木 麻純 (アルファポリス文庫)


 やっぱり借りた第三巻(笑)。借りものなので、早めに。

 陰陽師の家系に生まれ、その能力を色濃く引き継いだ12代目の辰史が商う「蛟堂」。漢方などを取り扱う雑貨屋という表の貌の裏で、大金と引き換えに“報復”を請け負い、物語に込められた思念を利用して依頼主の希望を叶える報復屋の怪異譚。

 『Ⅰ』『Ⅱ』に続き、西洋と東洋の「物語」で創られた2編。

 母親の溺死事故のあと父の再婚相手と上手くいかない美樹は、それから繰り返し悪夢を見るようになっていた。いつも守ってくれる仲のよい兄に危機が迫った時、その夢の示す意味を知った彼女は、ある日に出会った金貸しと風水師を名乗る怪しい女からもらった名刺を頼りに、辰史への依頼を決意する。――「ヘンゼルとグレーテル」

 子供を誘拐された母親は警察に通報するなと言われたにも関わらず、金銭要求の電話の後、警察に頼った。その結果、犯人からの連絡は途絶え憔悴した日々を送っていたが、猫を連れた丑寅と名乗る、一見軽薄だがどこか信じられる優しさを持つ男から貰ったロケットを手だてに、母の直観で犯人を突き止める。息子の居場所を知りたい一心で丑寅に紹介された「蛟堂」へ電話をするが…。――「隅田川」

 前者は美樹の通う大学の関係から、辰史の甥っ子(がめつい叔父辰史にも、「報復屋」の仕事にも批判的なしっかり者)の親友で、「蛟堂」の隣にあるこれまた胡散臭い古書店にバイトする瑠璃也が絡む物語。
 後者は辰史の兄で、調剤の才以外には力を持たず早くから後継ぎ候補としては落ちこぼれている、飄々とした性格の丑寅と、やはり辰史の金銭による報復という職業を忌み嫌っている従兄弟などが登場する一族の確執の中で行われる報復。

 今回は、辰史が唯一心を向ける恋人比奈や、辰史と同じくらい性格に問題がありそうな古書店店主鬼堂などの存在にはチラリと触れるだけにとどめ、登場人物を絞った展開で、物語としてのまとまりには安定感がある。

 また、使われる「物語」によりその顛末は相変わらずすぐに予測がつくものの、依頼者の“選択”と、被報復者に残した余地(「地獄の沙汰も金次第」)に対する“選択”がもたらす結末は、いずれも痛ましさと愚かさがより強く付与され、なかなかに残酷で重たいエンディングで、人間の怨みと業の深さを感じさせて、『Ⅰ』『Ⅱ』よりも奥行きのある作品に仕上がっている。

 辰史の傲岸不遜さも(その描写はやや説明的すぎ…)、実は人間の業を知るが故のやさしさに根ざしていることが、本作では(これまでよりも)やや浮かび上がっているか(ちょっと大人…?;笑)。

 そしてメガネ君の甥っ子太郎が実は美型だったことが分かり、おお!(考えれば辰史の血縁なのだから驚くことでもないのだが…;笑)。しかし、相変わらずの叔父批判の幼さは美型を以ってしても魅力アップには繋がらない…。
 むしろ、親兄弟にとことん冷酷な辰史の、この甥への甘さは(おそらくはシスコンに関わっているのだと思うが)かなり愛情豊かだ。その辺りの機微をもう少し理解している姿を感じさてもよいのでは…?

 とはいえ現実から物語の思念の世界に誘い、報復と救済の機会を与えるシーンの描写は、1作目の「道成寺」に見たように、此岸と彼岸のあわいをうまく混合させている。3作目にしてふたたび謡曲から「隅田川」を持ってきたあたりと合わせ、やはりそのコンセプトと、展開する世界は相変わらず楽しませてくれる。
 
 登場人物を限定し、甥っ子とのやり取りも控えめに、妙にピュアな恋愛関係を描写しない方が作品の結晶度が高いのが、さまざまな人間を創りだしている割に残念なところではあるが(私に合わないだけかもしれないけれど…)、ちょっと巻を追うに期待できる3作目だった。

 今回改めて思ったのだが、人間の造形が薄い印象は、その性格描写や思考内容を記述しすぎのせいかもしれない、と。饒舌は時として人物の奥行きを損ねてしまう。敢えて述べないことで、かつミスリーディングをさせない「行間」が欲しいかも。

 ところでそのピュアな恋愛、『Ⅰ』から仄めかされていたことではあるが、黒狐憑きの比奈の一族での微妙な位置が、ふたりの関係に影を落としそうだ。ここが描かれる時、もしかしたらその“ピュアさ”が意味を持ってくるのかもしれない…。

 互いにキャラクターの魅力(深み?)がいまいちなんだよね…と言いながらも、同僚は引き続き購入するらしいので、そのままおこぼれにあずかろうかと(笑)。


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新作は少年たちの冒険!?

新作「僕とカミサマの境界線」が出ましたね〜。
強くはないが勇敢な男子の冒険ファンタジーに脱帽です!

birthday-energy.co.jp/
ってサイトは鈴木麻純さんの本質にまで踏み込んでましたよ。今後に期待です!

Re: 新作は少年たちの冒険!?

ニコさま

すっかりご無沙汰しているブログに訪問&コメントをありがとうございます…(泣)。
新作がでたのですね…汗っ!

職場が変わり、バタバタしているうちに、
このシリーズすらも追いかけられなくなっています。
機会をみて図書館ででも読み継げられれば、と。

止まっている読書感もなんとか再開できるよう頑ります~
(めちゃめちゃたまっているのですが)

お気が向きましたらまた覗いてやってください。。。
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