スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

いまだからこそ、スパイたちの滑稽と悲哀 ―『裏切りのサーカス』―

『裏切りのサーカス(Tinker Tailor Soldier Spy)』 監督 トーマス・アルフレッドソン


Tinker_Tailor_Soldier_Spy_チラシ
 宥めなだめて酷使していたPCがいよいよアウト、なまけ病が加速して、気づけばかなりのご無沙汰に。
 ようやく新たなPCも落ち着いたので、またちょっとずつ再開。
 読みためたもの、観ためたものを(遅ればせながら)アップしていきます…(汗)。

 スパイ小説の巨匠、ル・カレの原作を、ゲイリー・オールドマンを起用した作品。
 騙し合いと裏切りが複雑に絡み合い、会話に含まれる多重な意味が物語を示唆するスパイ小説は、どうも(私の頭では)うまく読み切れず、原作は未読ながら、ル・カレの名はさすがに知っている(笑)。
 その作品を大好きなオールドマンが演じているとなれば。いかにもベタだが邦題の暗さも気に入って。

 現代でも各国の諜報活動は、技術の発達ともにますます高度化、複雑化しているのだろうが、“スパイ”といえば、やはり東西冷戦時下がもっとも緊張感をはらみ、暗躍した時代だろう。

 MI6とKGBとの情報戦、相次ぐ情報漏洩と作戦の失敗に、MI6の諜報部隊「サーカス」のリーダー“コントロール”(ジョン・ハート)は、チームに二重スパイ「もぐら」がいることを確信する。その人物の特定のためにメンバーのひとりジムをプラハに送るが、任務は失敗、その責任を取って右腕であった“スマイリー”(ゲイリー・オールドマン)を巻き込んで引退を余儀なくされる。
 残ったメンバーで構成された「サーカス」は、スマイリーらの勢力を一新し、新たな組織として動き始めようとしている。一方退職したコントロールは死去、残されたスマイリーは、愛する妻にも去られ、独り空虚ながらも静かな日々を送っていた。
 
 その頃、フランスで活動していたターから、スマイリーに近かったために左遷されたギラム(ベネディクト・カンバーバッチ)に連絡が入る。KGBの情報を持ち西側への亡命を求めるイリーナと出会ったターはその情報を「サーカス」へ送るが、翌日には彼女はKGBに拉致され、彼自身も逃亡せざるを得なくなる。身内に内通者がいることを確信したリーからの通報を受けたギラムは、MI6の統括レイコンに連絡、レイコンは引退したスマイリーにその裏切り者「もぐら」の探索を命じるのだった。

 スマイリーはギラムの協力を得ながら、“コントロール”の残した資料や機関内の記録をさかのぼって「もぐら」の正体に迫っていく。
 コントロールが疑いの目を向けていたのはサーカスの幹部4人。彼はこの4名にコードネームをつけていた。「ティンカー(鋳掛け屋)」、「テイラー(仕立屋)」、「ソルジャー(兵隊)」、「プアマン(貧乏人)」。そしてそこにはスマイリーも「ベガマン(乞食)」として「もぐら」候補に加えられていたことを知る。
 殺されたはずのジムの生還、ターが愛してしまったイリーナの安否、かつて出会ったことのある東側スパイカーラとの因縁、静かに、かつ冷徹に裏切り者の探索をするスマイリーがたどり着いた真実は…?

 スマイリーの回想による「サーカス」全盛時代の姿と彼の私生活の経緯、見つけていく証拠から推測される二重スパイの行動、現在の各人の動きの3つの映像が、ややくたびれたスマイリーのイギリス紳士然とした風貌の中に重ねられていく。
 
 カラーのはずなのに灰色のトーンが全体を覆い、モノクロームな印象の大人なハードボイルドに仕上がっている。むしろ回想である隆盛にあった時代の「サーカス」のシーンだけが、(やや色あせた)カラーとして印象に残る造りはみごと。
 また、そこはかとなく示唆される彼らスパイたちの私生活に、同性愛の要素が盛り込まれているのも、非常にイギリスらしく、これがストーリーにもうひとつの深みを出している。

 そして何よりも、ゲイリー・オールドマンの演技のすばらしさっ!!
 すっかり昔の勢いを失い、権力争いが表面化してきた組織への落胆、自身も歳を取り追い出されるように引退させられた非情、妻に裏切られ、去られた悲哀、独り目的を失って生きていく虚無感、そして内部の裏切り者を見つけなければならない憤りと痛み、それらが対KGBの優秀なスパイとしての本能ともいうべき冷静な判断力と際立った分析力、徹底されたクールな行動力に内包されているのが、淡々とした立居振舞いと表情にあらわれる。

 『レオン』や『フィフス・エレメント』『ハンニバル』などで、かなり危ないキレた役どころをこなしてきた(だから惹かれたのだが;笑)彼の演技力を改めて実感できる。重ねた年齢をそのまま滋味にできる、いつでも魅力的な俳優だ。ああ、やっぱり好きだなー。
 久々のキングス・イングリッシュもよい。

 周りのキャスティングも個性豊かだ。
 登場早々に死んでしまうボス、コントロール役のジョン・ハートは相変わらず存在感絶大だし、最近では『英国王のスピーチ』で印象深いコリン・ファースが「テイラー」役に、若いながらも将来性を感じさせる部下ギラム役のネディクト・カンバーバッチは、またみごとな英国ハンサムで(ふとした時に若き日のダニエル・ディ=ルイスを思わせる)、しょっぱなに撃たれるスパイジム役のマーク・ストロングはじめ、そのほかもヨーロッパらしい演技派が固めている。

 スパイの悲哀、人間の弱さや愚かさ、それゆえの愛おしさ、そしてハードな生きざまが、抑制された生き詰まる展開の中に凝縮された秀作。作品そのものがかっこいい。

 「サーカス」、それは滑稽と哀しみが同居する非日常の空間。
 この名を関したMI6のチームもまたその宿命を負っていたのではないか。
 そしてそれは、冷戦が終わった現在に、この命を懸けたスパイたちの行動がどこか滑稽な非日常に見える哀しさをも帯びて、原作がものされた時代ではなく、いま、観ることにより魅力を与えている。

 久しぶりにがっつりとした手ごたえある鑑賞に大満足。
スポンサーサイト

テーマ : 映画レビュー
ジャンル : 映画

trackback


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

-

管理人の承認後に表示されます

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

chat_noir

Author:chat_noir
FC2ブログへようこそ!

FC2カウンター
最新記事
最新コメント
カテゴリ
月別アーカイブ
カレンダー
06 | 2017/07 | 08
- - - - - - 1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 31 - - - - -
タイム
検索フォーム


リンク
アクセスランキング
参加しています。よろしかったら投票お願いします。。




人気ブログランキングへ

ブログランキング・にほんブログ村へ
RSSリンクの表示
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。