スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

もう一歩深みがあれば。官能と狂気のサスペンス・ムービー ―『私が、生きる肌』―

『私が、生きる肌』 監督 ペドロ・アルモドバル


The_Skin_I_Live_Inチラシ
 スペインの巨匠といわれるアルモドバル監督の作品。アカデミー外国語映画賞受賞作『帰郷(ボルベール)』を観た記憶はあるのだが(とてもスペイン色豊かな作品だったと…)、監督として記憶していなかった(汗)。

 ポスターの造りはいまひとつな気がしているのだが、久々のJ・ポール・ゴルチエの衣装コラボが気になった。

 天才整形外科医であるロベルは、人工皮膚の研究に没頭、その広大な邸宅を秘密の手術と研究所として、閉ざされた空間で実験を進めている。倫理違反に問われるほどの内容を持ったその実験への情熱の裏には、自分を裏切り、男と逃亡する途中の自動車事故で全身に大やけどを負い、そのショックで自殺を遂げた亡き妻を救えなかったことへの深い想いがあった。

 いま、その屋敷に軟禁され、実験の対象として、そして彼の理想を実現する存在として、亡き妻にそっくりの整形と皮膚移植を施され、究極の美しい肉体を作り上げられた女性ベラ。

 彼女はいったいどこから連れてこられ、そしてなぜその状態に置かれることになったのか。
 “完璧な肌”を持つ女の正体が、彼らの過去とともに明かされた時、ふたりの関係にもたらされた結末は――。

 ひとりの人間の愛と狂気が、天才の腕に宿ったとき、そこに発現した究極の行為を追い続けたサスペンス・ムービー。

 冷静で緻密、そして紳士なハンサム医師が、その紳士然とした沈着さで計画的に進めていく裡なる狂気を演じるのはアントニオ・バンデラス。
 スペインらしい情熱とダンディで、色気ムンムンのアクション・ヒーロー役の多い彼が、非常に抑制した演技でちょっと新鮮。

 また、みごとな肢体を惜しげもなく見せてくれ、その美しい表情で作品を輝かせるのが、ベラ役エレナ・アナヤ。
 ほとんど裸体といってよいくらいに密着した肌色のボディ・スーツで、ヨガの瞑想に入る彼女の映像は、すでにこの世界の異常さとそれでいて目をそらせない妖しい魅力を備えている。

 この館の家政婦長として、ロベルを支え、彼の研究を手助けするマリリアにベテラン マリサ・パレデスを配し、彼女の抱える過去も関わって、物語はベラの数奇な運命の衝撃とともに、危うく悲劇的な方向へと加速していく。

 ベラの人体改造の過程は、痛く、生理的に吐き気をもよおすくらいで、その映像が美しいゆえにより迫ってくるものがある。

 しかし、うーん…。
 愛と憎しみと哀しみと復讐の交差するこの危険な実験の中で、揺れ動き続けていたロベルが選択した道は、理解できなくはないものの、どこか釈然としないものが残る…。
 どう解釈をするかも、観者に委ねられてはいるのだが、振り子が振れきってしまったロベルの思考・行動がそれまでの彼の苦悩と恐ろしい行いから見るとあまりにも短絡・無謀としか見えない。最後の一線を越えた狂気の末が見えてこないのだ。
 これはもしかしてバンデラスの演技不足か……?単に私の読み取り不足か……?

 結局、人間は人間性ではなくて外見に左右される、としか受け取れない浅さに留まってしまったのが、物語がなかなかに衝撃的で複雑な心情を展開していただけに残念だった。

 とはいえ、映像美はみごと。人知れず監禁できるような洞窟まで持つスペインの古城に近代的なラボをガラス張りで作り上げているその対比、ベラの人工的な美しさと老女たちの人生を感じさせる表情、バンデラスのポーカー・フェイスの並列、そこに今回はややフェミニンなシルエットのワンピースと、バンデラスの肉体を被うビシッとしたスーツのデザインが活きている。ベラが着る花柄のワンピースが、物語の最後を結ぶ重要なファクターとなっているのも憎い。

 そして何より音楽がすばらしい。
 担当は、『裏切りのサーカス』も手掛けていたアルベルト・イグレシアス。
 オリジナルはもちろん、懐かしの作品をあるものはジャズ・サックスで、あるものはギターで、ピアノで、重厚に切なく流れるこれらは、監禁されているベガが、生きるなぐさめとするヨガの精神とルイーズ・ブルジョアの作品とともに、作品に荘重なイメージを賦与するのに大きく貢献している。(ブルジョアの作品をモチーフに使うあたり、監督のフェミニスム的な観点が透けてくる;日本では六本木ヒルズの蜘蛛の巨大な彫刻がある)

 やや物足りなさを残した巨匠アルモドバルの「問題作」。
 タイトルのとおり、「私(ベラ)が」「生きる肌」の内面が、ロベルの「揺れ」とともにもう少し強く出されたらよかったかも。
 サスペンスとしては楽しめる一作ではある。
スポンサーサイト

テーマ : 映画レビュー
ジャンル : 映画

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

chat_noir

Author:chat_noir
FC2ブログへようこそ!

FC2カウンター
最新記事
最新コメント
カテゴリ
月別アーカイブ
カレンダー
10 | 2017/11 | 12
- - - 1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 - -
タイム
検索フォーム


リンク
アクセスランキング
参加しています。よろしかったら投票お願いします。。




人気ブログランキングへ

ブログランキング・にほんブログ村へ
RSSリンクの表示
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。